フランスに建設中の国際熱核融合実験炉(ITER)について、計画を主導するピエトロ・バラバスキ機構長が取材に応じ、2034年とする運転開始目標を「1年近く前倒しできる可能性がある」と明かした。
工事は予定より6%前倒しで順調に進行
ITERは、核融合反応の実現を目指す世界最大級の実験炉で、日本、欧州連合(EU)、米国、ロシア、中国、韓国、インドの七つの国・地域が共同で建設している。
当初計画では、核融合反応を起こす条件となる超高温の「プラズマ」を生成する初期運転を2025年、最終目標の重水素と三重水素(トリチウム)の核融合反応を伴う本格運転を2035年に始める予定だった。しかし、新型コロナウイルス禍や重要部材の修理で工事が遅れ、一昨年に目標の大幅な延期を発表した。
バラバスキ氏によると、現在の工事は順調で「予定より6%前倒しで進んでいる」という。山場の一つが、1億度を超えるプラズマを閉じ込めるドーナツ形の真空容器の設置で、9基に分かれた巨大な金属部品をクレーンでつり上げて組み立てる作業を行っており、来年中に全基が設置される見通しだ。
日本製の中核部品は性能確認試験が進行中
中核部品の超伝導コイルやプラズマ加熱装置は日本が製造した。現地では性能確認試験が進んでおり、バラバスキ氏は「着実に成果を上げている」と評価した。
一方、米トランプ政権による科学分野の歳出削減やロシアのウクライナ侵略が、ITERにも影響を及ぼしつつある。事業費は各国・地域の分担金で賄われるが、米露やインドは今年の支払いの一部を期限内に完了する見通しが立っていないという。バラバスキ氏は「全ての国・地域が約束を果たすよう呼びかけていく」と強調した。
新興企業との競争激化、ITERの有用性を強調
核融合発電を巡っては、ITER計画とは別に、より早期の実現を目指す新興企業が米欧や日本で次々と誕生し、巨額の投資を集めて独自技術の開発を進めている。中国も国家プロジェクトを進めており、国際競争が激化している。
こうした動きについて、バラバスキ氏は「リスクを取って挑戦する新たな取り組みを歓迎する」と述べた。その上で、「ITERは世界最先端の部品を多数搭載した実現性の高い計画で、依然として有用な存在だ。得られた知見を積極的に公開し、企業の取り組みも支援したい」と話した。



