富士市内の小学校では、地元ならではの食材の魅力を生産者から「直接聞き、食べて学ぶ」給食出前授業が、17年前から行われている。実施主体である官民による協議会の一員として実務を担うのは、主婦らで作る民間の地元NPO団体だ。
巨大マッシュルームに児童ら歓声
今年7月、市立元吉原小学校で行われた2年生への給食出前授業の講師は、市内でマッシュルームを生産する長谷川光史さん(70)が担当した。長谷川さんが教室に持ち込んだのは、児童の顔ほどもある巨大マッシュルーム。驚いた児童から「どうやって作るの?」「肥料や太陽の光はどうするの?」と質問が相次いだ。
「きょうの給食はマッシュルームのスープだよ」と授業の終わりに担任から告げられると、歓声が沸いた。「毎日ちゃんと見てやることが、大きく育てるコツ」との長谷川さんの話を聞き、「学校菜園のヒントにもなったね」と担当教諭は話していた。
昨年度は51回、約2500人の児童が受講
昨年度は市内約2500人の児童を対象に、計51回の授業が行われた。取り上げるのはトウモロコシ、白ネギ、ホウレンソウ、ミカンといった地元産農作物から牛肉、ニジマスといった肉や魚類にも及ぶ。事務局として学校と生産者をつなぎ、日程調整や予算管理などを担うのが、小櫛和子理事長(75)らNPO「ふじのくに学校給食を考える会」(同市)のメンバーだ。
考える会の役割は多い。決めた日に予定の食材が手に入るとは限らない。高額食材の場合は、学校側と給食費のやりくりも必要になる。「地産地消は食育の原点。子どもたちの喜ぶ表情ですべて報われる」と小櫛さんは語る。
予算不足、NPOが4年連続で補填
開催数や受講児童数が年々、ほぼ増加をたどる一方で、小櫛さんらには悩みが生じた。市やJAなどが拠出する年間24万円の協議会の予算では、授業の講師料すらまかなえないという。窮状を知り、1回5000円の講師料を受け取らない生産者もいるという。
支出超過分はここ4年連続で考える会が補填している。協議会の毎年の予算案には「事業費が予算を超えたら、考える会が補填する」とのただし書きがあるためだ。公立小学校での授業費用の一部を、運営ボランティアである民間NPOが負担するという状況。今年度からスポンサーが1社減り、考える会はその金額分も負担することになった。
疑問の声はあちこちで上がる。市議の一人は「行政が負担するのが筋」。年予算の半額12万円を負担する市の農政担当者は「増額は厳しい」。「学校に実費請求するシステムにしてはどうか」「決められた予算の範囲内に、回数を収めればいい」との意見もある。
ただ、こうした声に小櫛さんは、首を横に振る。「食べ物の裏にどれだけの人の、どれだけの苦労があるか、一人でも多くの子に知ってもらいたい」。実施回数を減らすような改変ならしたくないとの思いがある。富士市が誇る給食出前授業を続けるには、皆でより知恵を絞る必要がありそうだ。
給食出前授業の実施主体である官民でつくる協議会は、2012年度に地産地消優良活動表彰の農林水産大臣賞を、23年度は県農林水産業振興会の「ふじのくに食の都づくり貢献賞」を受賞している。



