マイナビニュース・エンタメチャンネルの新たな定番記事を目指すお試し企画「日曜トライアル」。今回は、世間を騒がせたワードの奥を読み解く【バズワード検証】をお送りする。
NHK放送文化研究所が16日に公表した「2025年国民生活時間調査」をきっかけに、「テレビ離れ」という言葉がトレンドにも上がるなど、SNSをにぎわせた。同調査によると、平日に15分以上リアルタイムでテレビを視聴した人の割合が、16~19歳で27%、20代で33%にとどまった。若年層の約7割が平日にテレビをほぼ見ていない――この数字は確かにインパクトがある。
見落としがちな「テレビ視聴」の定義
ただし見落としてはいけないのは、「テレビ視聴」が、「リアルタイムでテレビの放送波を視聴する」ことを指しているという点だ。TVerや各局の動画配信サービスが日常化した現在、「テレビを見ない」と「テレビ番組を見ない」は、もはや同じ意味ではない。では、今回の結果をどう捉えるべきなのか。
NHKと民放キー局5社 番組表に合わせてテレビの前で見る時代ではない 今回の調査結果が示しているのは、放送波をリアルタイムで視聴する習慣の減少。かつてのように、番組表に合わせてテレビの前に座り、決まった時間に番組を見る行動が、若い世代を中心に弱まっていることは間違いない。
若者はテレビ番組を見なくなったのか?
しかし、それをそのまま「若者はテレビ番組を見なくなった」と言い切れるのだろうか。ドラマやバラエティを中心に、放送後にTVerで見られるようになり、SNSで切り抜きや感想、考察を見てから本編にたどり着く人もいる。自宅のテレビ画面でTVerや動画配信サービスを見る人もいれば、スマートフォンで通学・通勤中に見る人もいる。コンテンツはテレビ局制作でも、視聴端末はスマホ。画面はテレビでも、視聴形態は配信。そうした行動が当たり前になっている。
つまり、若者が離れているのは「テレビ番組」そのものというより、「決まった時間に、放送波で、リアルタイムに見る」という従来型の視聴スタイル。今回の調査結果は、“テレビ離れ”というより、“リアルタイム放送離れ”として読み解く必要がある。
各種データにも表れる配信視聴の伸び
そのことは、テレビ局側の動きを見ても明らかだ。TVerは、常時800番組以上の見逃し配信に加え、地上波放送のリアルタイム配信も提供。自ら「テレビの開放」を掲げ、テレビコンテンツを放送時間や受像機から解き放つ方向へ進んでいる。TVerの発表では、2026年1月の月間ユーザー数は4,470万MUB、月間動画再生数は6.3億に達している。運用型広告「TVer広告」の2025年度売上も前期比66%増に伸長し、広告主数は2,780社に拡大した。
民放キー局を傘下に持つ持株会社の2025年度の決算資料にも、配信の存在感ははっきりと表れている。TVerなどのデジタル広告収入を見ると、日本テレビは前期比13.0%増、テレビ朝日は37.2%増、TBSテレビは18.8%増、テレビ東京は18.3%増と大幅に増収(※フジテレビは、一連の問題の影響により減収)。従来のテレビCM収入に比べて規模は小さいものの、民放各局にとって配信広告が無視できない収益領域になっていることは確かだ。
「テレビ」という言葉の定義が曖昧に
「テレビ」とは、テレビ受像機のことなのか。地上波やBSなどの放送波のことなのか。テレビ局が制作した番組のことなのか。それとも、家族でリビングに集まって同じ番組を見るような、かつてのメディア体験全体を指すのか。そして、地上波ドラマをTVerで見た人は、テレビを見たのか、見ていないのか。テレビ受像機でYouTubeやNetflixを見た人は、テレビを見たのか、見ていないのか。スマホでバラエティ番組を見逃し視聴した人は、テレビ番組に接触したと言えるのか…。
「生活時間調査」において長年同じ分類で測るからこそ、リアルタイム視聴の減少が明確になったが、その数字を受け取るときには、「リアルタイムでテレビの放送波を見る人が減った」という事実と、「テレビ番組が見られなくなった」という解釈を分けて考える必要がある。
リアルタイム視聴離れが放送業界に突きつける課題
とはいえ、リアルタイム視聴離れは、放送業界にとって大きな課題。特にニュース、スポーツ、生放送、災害報道のように、同時性が価値を持つコンテンツでは、リアルタイムで見られることの意味は今も大きい。
今回の調査をきっかけに問うべきなのは、「テレビは終わったのか」ではなく、「テレビ」という言葉で、何を測り、何を語るのか。放送、配信、SNS、視聴デバイスをまたいだ時代に、テレビ番組の価値をどう捉え直すのか――それこそが、いまの「テレビ離れ」論に必要になってくる。



