「帰る場所を閉じるとき~家じまいの決断~」17日放送 正解なき選択を追う
「帰る場所を閉じるとき~家じまいの決断~」17日放送

「大切だからこそ残すのか、家族を思うからこそ処分するのか」――。第35回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『帰る場所を閉じるとき~家じまいの決断~』が、17日26時15分からフジテレビで放送される(関東ローカル、TSKさんいん中央テレビ制作)。家族の思い出が刻まれた“帰る場所”を自ら閉じる決断をした人々の姿を追う。

高齢化と家を継がない選択

高齢化が進む一方、若者が都会へ出ていき、家を継がないという選択も珍しくなくなった現在。「大切だから家を残す」という選択には、維持管理や税金など終わりのない負担が伴う。その負担を受け入れて家を残すのか、自らの手で大切な家を処分するのか。番組は、正解のない選択を迫られた家族たちを追う。

島根県浜田市の河内紀子さん(86)の決断

島根県浜田市の一軒家で一人暮らしをしていた河内紀子さん(86)は、2025年、自身の病をきっかけに、一人息子の利幸さんが暮らす東京へ移り住むことになり、長年暮らした家を処分することを決めた。

最愛の亡き夫が家族のために建てた家には、息子や孫との数え切れない思い出が刻まれている。許されるのであれば、最期までこの家で過ごしたかった――。そんな本音を胸の奥にしまい、紀子さんはなぜ“家じまい”という決断を下したのか。家族にとって唯一の“帰る場所”を閉じるまでの日々を見つめる。

「大切だから残す」ことにも続く負担

番組では、島根県で家じまいを事業として手掛ける齋藤さんにも密着する。取材を通して見えてきたのは、「大切だから家を残す」という選択にも伴う負担だった。家を維持するためには定期的に足を運ばなければならず、固定資産税に加え、電気や水道などの基本料金もかかり続ける。

時間がたてば家は劣化し、修繕費も必要になる。一方、放置すれば倒壊などの恐れがある「特定空き家」などに分類され、さらなる経済的負担につながる可能性もある。そして、家を残すということは、そうした負担も子や孫へ受け継いでいくことになる。

思い出の品を自ら捨てるということ

では、負担の連鎖を避けるために“家じまい”を選べば、それで問題は解決するのか。番組が追った家族たちを待ち受けていたのは、決して簡単ではない現実だった。片づけを進めるたびに見つかるのは、母や夫、子どもたちの思いが形になった品々。手に取るたび家族との時間がよみがえり、その手が止まる。

家族の記憶が刻まれた唯一の場所は、失えば二度と戻らない。それでも自分の手で捨てていいのか。その問いに、正解を示してくれる人はいない。 “家じまい”とは、残された家族の記憶まで捨ててしまう無情な選択なのか。つらく重い道のりにもかかわらず、なぜ家族たちは家を閉じる決断をするのか。番組は、その覚悟の裏にある思いを探っていく。

25歳のディレクターが見た現実

取材したTSKさんいん中央テレビ報道部の櫃田優果ディレクターは、25歳の自身にとって“家じまい”は「どこか遠い出来事でした」と振り返る。しかし、家じまいを決めた家族への取材を重ねる中で、「言葉で言うほど簡単ではない“家じまい”の現実と、帰る場所を自ら捨てるという選択の重み」が見えてきたという。

櫃田ディレクターは「家は、家族が生きてきた記憶を刻んでいる場所であり、どんな時でもただそこにあって温かく迎え入れてくれる、唯一の“帰る場所”です。大切だからこそ残すのか、家族を思うからこそ処分するのか。この選択は、どちらを選んでもかけがえのない何かを失うことになる、いわば正解のない選択です」と話す。その上で、「親を、子を思うからこそ、覚悟を決め、道を選んだ家族たちの姿を通じて、今後社会問題として深刻化してゆく“家じまい”について考えるきっかけになれば幸いです」と呼びかけている。