『有吉の壁』レギュラー放送が終了、特番へ ネタ番組の難しさと功績を検証
『有吉の壁』レギュラー終了、特番へ ネタ番組の難しさを検証

9月30日、『有吉の壁』(日本テレビ系、毎週水曜19:00~)のレギュラー放送が終了した。同番組は2015年4月から特番として13回放送された後、2020年4月に水曜19時台のゴールデンタイムでレギュラー化。コロナ禍に突入したタイミングでのレギュラー化となり苦しい状況に追い込まれながらも、スタッフと芸人たちの奮闘で乗り切ってきた。今秋以降は再び特番に戻ることが明かされているが、生活情報系やクイズ・ゲーム系のバラエティが多くを占める中、お笑い要素の濃い希少な番組だっただけに反響は大きい。

週替わりロケを選んだ果敢なスタッフ

番組公式Xに「有吉弘行が『壁』となり お笑い芸人が全力で壁に挑む純度100%のお笑い番組!」と掲げられているように、企画のベースは芸人の発掘・育成。期待の若手とブレイクし損ねた中堅が必死に有吉を笑わせようとする姿で支持を得てきた。

番組のメイン企画は全国各地の人気タウンやスポットでロケが行われる「一般人の壁」。お笑い系の番組としてはコントセットなどの経費を削減できる一方で、「リサーチや手配から、現地の人々との調整、芸人を移動させての収録まで労力のかかるロケに挑んでいる」というだけで称えられるべき特別な番組となっていた。

どこでロケを行い、その設定をどれだけ生かした笑いを生み出していくのか。スタッフの仕掛けに芸人が全力で応える形が成立していたからこそ、笑いのクオリティも一定以上の水準をキープできていたのだろう。

多彩な企画とショートネタの強み

さらに「バズりの壁」「ごちそうの壁」「なりきりの壁」「リポートの壁」「アーティストの壁」などの飽きさせない多彩な企画も光っていた。芸人たちがランダムなネタを披露するだけの番組ではなく、スタッフが工夫を凝らし、手間をかけて制作する。そんな努力が伝わっていたからこそお笑い好きたちの心をつかんでいた。

いずれの企画にも共通しているのは、尺の短さと手数の多さ。ショートネタはネット動画の普及でコンテンツに対するせっかちさが増した現在の視聴者にフィットしている。ただそれでも『爆笑レッドカーペット』(フジテレビ系)などがそうであったようにレギュラー番組として視聴率を獲得し続けるのは難しい。

ネタ番組を取り巻く厳しい環境

ちなみに他のネタ番組に目を向けると、TBSの『ザ・ベストワン』は21年10月にレギュラー化されたが、22年9月で終了して特番化。ただ今年はまだ放送がない。同じTBSの『ザ・イロモネア』、フジの『千鳥のクセスゴ!』『爆笑レッドカーペット』もゴールデン帯のレギュラーから特番に変わっている。同じ日テレ系の『エンタの神様』も含め、「ネタ番組は特番でしか勝負できない」という業界内の判断がわかるのではないか。

シンプルなネタ番組ではリアルタイムで見てもらえない。そんな時代だからこそスタッフの工夫と手間が光る『有吉の壁』の評価が高かったのだが、全世代の個人視聴率獲得が必要な現在のテレビシーンでは限界だったのかもしれない。

そもそもYouTubeだけでなくInstagramやTikTokなどで気軽にネタ動画が見られるようになったことでネタ番組を取り巻く状況は年々厳しくなっていた。芸人たちのネタは、わざわざテレビをつけなくても見られるし、ましてやリアルタイムで見なければいけないものではない。だからテレビでネタ番組をリアルタイムで見るとしたら、『M-1グランプリ』(ABCテレビ・テレビ朝日系)や『キングオブコント』(TBS系)などの賞レースくらいになる。

あるいは別の何かにたとえるならサッカー中継か。「サッカー日本代表の試合は見るが、毎週行われるJリーグの試合は見なくてもいい」という感覚と同じように、「『M-1グランプリ』や『キングオブコント』は見るが、レギュラーのネタ番組は見なくてもいい」という格差的なニュアンスを感じさせられる。いずれにしても、ネタ番組をレギュラー放送することのハードルは高くなっていく一方なのだろう。