「信長の野望」「三國志」シリーズで知られるコーエーテクモホールディングス(HD)会長の襟川陽一さん(75)は、ゲームクリエーター「シブサワ・コウ」としても活躍する。40年以上前、妻から贈られたパソコンで趣味として作った歴史シミュレーションゲームが人気を集め、家業の染料問屋から業態を転換するきっかけとなった。
妻からのプレゼントが転機に
栃木県足利市で家業の染料問屋「光栄」を経営していた襟川さんは、海外勢との競争で厳しい繊維業界の経営環境に自信を失っていた。松下幸之助ら名経営者の本を買うために通った書店で、たまたま手に取ったパソコン雑誌に興味を持ち、パソコンが欲しくなったという。
その気持ちを知った妻の恵子さん(現コーエーテクモHD取締役名誉会長)が、昭和55年の誕生日にパソコン「MZ-80C」(シャープ製)をプレゼントしてくれた。価格は26万8000円で、当時の初任給が8万円程度だったことを考えると、現在の価値で100万円ほどになる。
独学で学んだプログラミング
「うれしかった。教則本を買ってきて、パソコンを動かすプログラミング言語を独学で学びました」と襟川さんは振り返る。この頃は、企業や研究機関に置かれ複数人で共同使用されていた大型で高価なコンピューターが、技術の進歩で小型化し、個人所有を想定したパソコンが登場した黎明期だった。
パソコンの活用は、経営に役立つ財務・在庫管理ソフトの作成だけにとどまらず、「おもしろいなら売ってみれば」という妻の言葉をきっかけに、趣味で作った歴史シミュレーションゲームが人気となり、染料問屋からゲーム会社への転換につながった。1台のパソコンは夫妻の未来だけでなく、ゲーム産業の歴史も変えた。



