絵画未経験から約半年で5000フォロワー、双極性障害と向き合うtakuyaさんの奇跡の一枚
絵画未経験から半年で5000フォロワー、双極性障害の画家

ほぼ絵を描いたことがない状態から246日で緻密なクジラの作品を完成させたtakuyaさん(@takuya__art)。その制作過程を収めた動画は82万回再生を突破し、SNSフォロワーは約5000人に達した。双極性障害を抱えながら創作を続け、障害を持つアーティストを称える国際的なアートプライズ「HERALBONY Art Prize 2026」でファイナリストにも選ばれたtakuyaさんに、絵の道に挑戦したきっかけや成功の理由を聞いた。

「感情を伝えるのが難しい」苦しい時期に妻の誘いで美術館へ

takuyaさんは、双極性障害と向き合う中で「心にはさまざまな感情があるのに伝えることが難しく、自分のことがよくわからない」と感じる時期があったという。そんな彼を見て、妻が全国の美術館へ連れ出してくれた。多くの作品に触れるうちに「自分でも絵を描いてみよう」と思い、ペンを握った。

「最初は驚きが大きかったです。正直、ここまで多くの人に届くとは思っていませんでした。たくさんの人に作品を見てもらえる喜びと同時に、アンチコメントがきたら耐えられるかという不安があり、スマホを握る手が少し震えていました。でも、『なんだか心が熱く励まされたような気持ちになりました』というようなコメントばかりで安心しました。そのとき初めて、僕が届けているのは作品だけでなく、挑戦する姿や過程そのものだと思えました。フォロワー数が増えていく嬉しさ以上に自分のやっていることが誰かの一歩につながることの方が嬉しかったです」

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クジラに込めた自分自身へのメッセージ

話題となったクジラの絵には、takuyaさん自身の姿が重ねられている。「クジラは普段、光の届きにくい場所で生きていますが、ときには海面に向かって浮上します。双極性障害と向き合う中で、苦しさや孤独を感じる時間もありました。それでも少しずつ前を向き、上へと進もうとしている自分の姿をクジラに重ねて描きました。この作品は、『暗闇の中にいても、前へ進み続ければ必ず光に近づける』という、自分自身へのメッセージでもあります」

制作中は完成形を細かく決めず、感情の流れに任せて描いたという。「不思議ですが、描いているうちにクジラが自分の心を映すような存在になっていきました。この作品は『描いた』というよりも、『自分自身を見つめ直した時間』になったと思います」

支えになったのは妻と母の存在

takuyaさんは、絵を描き続ける原動力として家族の存在を挙げる。「信じてくれた人がいたので、頑張ることができました。病気を打ち明けても変わらず受け入れ、支え続けてくれた妻。シングルマザーとして育ててくれた母。この二人に、諦めず挑戦し続ける姿を見せたいという思いが、制作を続ける力になっています。作品は一人で描いていますが、ここまでこられたのは決して一人の力ではありません。その感謝を、これからの制作や発信を通じて二人に返していきたいと思います」

「双極性障害である自分を否定しない」

双極性障害と向き合うtakuyaさんは、現在の向き合い方についてこう語る。「大前提として、通院と服薬を続けること。生活リズムを崩さないこと。この二つが大切だと考えています。その上で、病気を克服しようとはせず、症状や自分自身を理解しようとしながら病気と向き合うことが大事だと思います。以前は体調の波に抗って苦しくなることが多かったですが、今は『今日は60%くらいの力でやろう』と力を抜きながら、自分の状態を受け入れることができています。病気がなかったら絵を描いていないと思うので、双極性障害を抱える自分を否定しないことも大切にしています」

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「評価されそうな絵」ではなく心からワクワクする表現を

画家として道をつかめた理由について、takuyaさんは「一番大きいのは、妻の存在です。双極性障害を抱える自分を受け入れ、どんなときも変わらず応援してくれました。安心できる居場所があったからこそ、制作を進めることができたと思っています。もう一つの要因は、『評価されそうな絵』ではなく、心からワクワクする表現を大切にして制作したことです。誰かの好きに合わせるのではなく、自分の感情や感覚を信じ続けた結果、共感してくださる方々と出会えたのではないかと思っています」

「結果が出なくてもいいから描き続ける」と決めて制作を続けてきたというtakuyaさん。絵を描くことは自分と向き合い続けることに等しく、良い面も悪い面も見えてしまうため心が消耗することもあったが、向き合うことをやめなかった。「苦しい時期もありましたが、その積み重ねが今につながっていると思っています」

「障害者アート」という言葉への違和感

「HERALBONY Art Prize 2026」でファイナリストに選ばれた作品『ゼロの心臓』。takuyaさんは「障害者アート」という言葉について考えるようになったという。「以前までハッシュタグに『障害者アート』と積極的に使っていましたし、言葉の意味も深く考えることはありませんでした。しかし、ある時人に『アートに障害の有無って関係ないですよね』と言われて、『障害者アート』という言葉について考えるようになりました。さらに、『HERALBONY Art Prize 2026』の授賞式パーティーで、審査員・黒澤浩美さんの『一人一人のクリエイターに、それぞれ固有の名前が先にある』という言葉を聞いて、クリエイターの名前に先行してしまう『障害者アート』という言葉の違和感をより感じるようになりました。『障害者が描いた絵』ではなく、『takuyaが描いた絵。この人はこんな病気があるみたい』が理想です。ただ伝わる順番だけの話かもしれませんが、大切なことだと思います」

「応援される作家」を目指して

今後の目標について、takuyaさんは「作品が売れることも大切かもしれませんが、僕はそれよりも“応援される作家”になりたいと思っています。作品だけでなく、制作の背景や想いも発信して、そこに共感してくれる人が増えていけばいいなと考えています。その積み重ねが、メディアでの発信や講演、企業とのコラボレーションなど、さまざまな新しい挑戦にもつながると思うからです。表現の場を広げながら、『生きづらさを抱えていても自分らしく挑戦できる』ことを伝えていきたいです」