2.5次元アイドルグループ「すとぷり」のメンバー、莉犬さん(28)は小中学生時代、家族の不和に苦しんだ。悩みを相談した同級生たちから仲間外れにされ、救いの場だった部活でも挫折を味わう。やり場のない気持ちは、未来の自分に宛てた手紙に吐き出していた。「しんどくなるほど自分と向き合った、その頑張りを認めてあげて」とメッセージを送る。
家族の不和と母の苦しみ
中学生の頃が家庭の中が一番ギスギスしていました。母は、父と兄と関係が悪く、精神的に最も不安定でした。優しい性格の父は、人からお金のことで頼られると断れないところがあり、家計に余裕がありませんでした。母が親戚に頼み込んで借りたお金で、大学受験を控えた兄を塾に通わせていましたが、彼はゲームセンターに入り浸っていました。
「どうしてこんな人生になっちゃったんだろう」。よく泣き崩れる母の隣で、「元気出して」と声をかけていました。いら立ちが募ると、母は家を飛び出して帰ってきません。捜しに行くのも、精神科の病院に連れて行くのも、自分の役目でした。でも、どれだけそばにいてあげても、母が気に掛けているのは兄のことばかり。何とかしてあげたいという思いは薄れていき、母が「死にたい」と泣く姿を見ても、「勝手にすれば」と考えるようになりました。
同級生からの無視と手紙
中学1年のとき、仲の良かったクラスメートに笑い話でもするかのように、そんな家族のことを相談していました。でもそれが、知らず知らずのうちに心に負担をかけていたのかもしれません。その子を含む仲良しグループ全員から無視されるようになったのです。突然話し相手がいなくなり、昼食も一人。教室が怖くなり、それからは家族のことを友達に話したことはありません。
母が泣いていた日、悲しい気持ちが今にもあふれそうなとき、心のSOSを便箋につづり、最後にこう問いかけていました。未来の自分は幸せでしょうか――。ペンを置くと、心は不思議と軽くなっていたのです。そうなることを願いながら、数十通は書きました。
部活での挫折とネットでの出会い
家にも教室にも居場所がなかったとき、部活だけが救いでした。物語を考えることが好きで中学、高校と演劇部でしたが、高校の顧問に書く台本すべてを却下されました。「届けたい気持ちを誰にも届けられない」。2年の途中で退部し、学校も休みがちになりました。
有名曲のカバー動画をネットに投稿し始めたのはその頃です。「自分の声を誰かに届けたい」と、ボーカロイド曲を歌ってみたのです。視聴者からの反応がうれしく、みんなが好きだと言ってくれる自分を信じてみようと思えました。動画はすとぷりのリーダー「ななもり。」の目に留まり、デビューにつながります。逃げ場として始めた活動が、いつの間にか人生そのものになりました。
中高生のときは悲しみにさいなまれるばかりでした。今は向き合い方が変わりました。家族の問題で苦しんだのは、家族を大切に思っていたから。部活で挫折したのは、理想を持って取り組んでいたから。母は今も心が不安定ですが、自分から会いに行っています。
しんどいと感じるのは、それだけ頑張っている証しです。その頑張りを認めてあげ、自分のことを少しだけ大切にしてあげてください。
莉犬さんは東京都出身。アニメなどの仮想世界(2次元)にとどまらず、ライブなどの現実世界(3次元)でも活躍する2.5次元アイドル。「すとぷり」のユーチューブチャンネル登録者数は457万人。2023年にはNHK紅白歌合戦にも出場。今年7月、自身の半生をつづった「生きづらいぼくたちへ」(水鈴社)を刊行した。



