クーシスト指揮の都響、精緻で壮大なシベリウス演奏に不思議な力
クーシスト指揮の都響、精緻で壮大なシベリウス演奏

東京都交響楽団(都響)の次期首席指揮者に内定しているペッカ・クーシストが、6月20日に赤坂のサントリーホールで公演を行い、精緻でありながら壮大な演奏で聴衆を魅了した。クーシストが都響を指揮するのは今回で2度目。前回の共演が鮮烈だったことから、今回の起用につながったとみられる。

前半は北欧の透明感あふれる作品

プログラム前半では、シベリウスの組曲《恋人》と、ヒルボリの《バッハ・マテリア》が演奏された。両曲とも薄く儚い弱音を生かしたスタイルが特徴で、クーシスト自身がヴァイオリン独奏も担当。そのひんやりとした透明感は、モダンな家具のショールームに迷い込んだような気分にさせる。ヒルボリ作品の終盤では、クーシストが口笛を披露する場面もあり、その涼し気な音色に会場から驚きの声が漏れた。

後半のシベリウス交響曲第5番は予想を裏切る壮大さ

しかし、クーシストは北欧の雰囲気だけにとどまらない。後半のシベリウス《交響曲第5番》では、冒頭から大胆で、むしろ堅いとさえ言える表現が続いた。ホルンの反復音型が豪壮な輪郭を形成し、なよなよした素振りが一切ない、岩塊を積み上げたようなシベリウスを構築。第2楽章では、主題が生き物のようにむくむくと巨大化する過程を、数学的に精緻なピツィカートの累積によって描き出した。終楽章も熱く、速いテンポで駆け抜けた。

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細部への執着が作品の巨大さを際立たせる

音楽評論家の沼野雄司氏は、「強弱やアクセントといった細部を知的かつ正確に処理すると、往々にしてスケールが小さくなりがちだが、クーシストの場合、細部への執着が作品の並外れた巨大さを際立たせる方向に働いている」と評価。さらに、「指揮者とは不思議な職業で、技術や知識だけでなく、オカルトめいた何かがものを言う。クーシストの演奏にもその不可視の力の片鱗がうかがえた。AI全盛時代における人間の神秘に思いを馳せる」と絶賛した。

公演はサントリーホールで行われ、多くの聴衆がクーシストの指揮と都響の演奏に酔いしれた。

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