囲碁対局中の「ぼやき」は個性? 静寂が主流のプロ棋戦、かつてはダジャレも
囲碁対局中の「ぼやき」は個性? 静寂が主流のプロ棋戦

囲碁棋士の塚田千春二段(22)が、プロ対局室における「ぼやき」の変遷について綴った。緊張感と静寂に包まれた特別対局室の前で、安田明夏初段と対談する中で、かつて碁会所で聞かれた強烈なダジャレぼやきの記憶を語った。

かつてはあちこちで「魂の叫び」

「突然ですが、みなさん、プロの対局風景にどんなイメージを持っていらっしゃいますか? ピンと張りつめた緊張感と部屋を包む静寂、聞こえてくるのは石を打つ音と対局時計の音だけ……。確かに最近のプロの対局室はとても静かです」と塚田さんは述べる。

しかし、先輩棋士に聞くと、以前は「あいたたたー」や「しまった!」といったぼやき声が各所で上がっていたという。塚田さん自身、子ども時代に通った碁会所では「しまったしまった島倉千代子」「困った困ったこまどり姉妹」「まいったまいったマイケル・ジャクソン」といったダジャレが響き渡っていたと振り返る。「まだ子どもだった私は、それが芸人さんのギャグということも、島倉千代子さんやこまどり姉妹さんのことも知らなかったのですが、インパクトが強すぎて今でも鮮明に覚えています。おじいさまたちは、たまにケンカもしていましたが、とても楽しそうでした」

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若手棋士はポーカーフェースが主流に

碁会所とプロの対局室は異なるが、塚田さんら若手・中堅棋士は院生時代から「対局中にぼやいてはいけない」と指導されてきたため、それが習慣化している。その影響で、若手棋士にはポーカーフェースの人が多く、現在のプロ対局室の静けさにつながっている可能性があるという。

心理戦の観点からも、自分が形勢をどう思っているかを相手に悟られないようにするため、ぼやきは避けられる。記録係として対局を見守っていても、棋士がぼやく場面はほとんど見られないが、相手が離席している時に小声でつぶやくケースは少なくないと塚田さんは指摘する。

自身の「どうしよう」という失態

ポーカーフェースを装う塚田さん自身も、一度だけぼやいてしまった経験がある。公式戦の終盤、形勢はやや優勢ながら残り時間がわずかの中、手番が回ってきた際にどこに打つべきか分からずパニックに陥り、「どうしよう」と心の声が漏れてしまった。「対局室は静かなので、めちゃくちゃ恥ずかしかったです。でも思い返すとあの失態は、私の魂の叫びだったと思います。人間ですもの。そんなこともありますよね」と語る。

ぼやきも個性、なくなるのは寂しい

大きなぼやき声は減少傾向にあるが、塚田さんは「ぼやきも個性。私個人の意見としては、なくなると寂しいなとも思います」と述べ、「時代と共に変化する囲碁界のぼやき事情は今後どうなっていくのでしょうか。これからも棋士の対局時の姿勢に注目していきたいと思います。ダジャレのぼやきもいつかまた聞いてみたいな」と締めくくった。

塚田千春二段は2004年4月5日生まれ、大阪府出身。日本棋院関西総本部所属で、村松大樹七段門下。2020年に入段(女流特別採用推薦)、2024年5月に二段に昇段した。趣味は阪神タイガースの試合観戦とカラオケで、カラオケは一人でも行くという。

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