被爆医師・永井隆博士(1908~51年)の代表作「長崎の鐘」の英語版が、長崎原爆資料館(長崎市)のミュージアムショップで月100部を超える異例の売れ行きとなっている。英訳と日本語の合本で、購入者のほとんどが外国人という。需要に対応するため、発行しているNPO法人は今月、新たに英訳のみの「長崎の鐘」を出版した。
絶版からの復刊、外国人に支持
「長崎の鐘」は、原爆で重傷を負いながらも負傷者らの治療にあたった永井博士が被爆直後の惨状などをつづった体験記で、1949年に刊行された。84年には英訳本が出版されたものの、絶版になっているため、入手は困難な状況という。
博士を顕彰するNPO法人「長崎 如己の会」(長崎市)が2021年の博士没後70年記念事業の一環で、日本語と英語を一冊にした英語版(B6判)を発行した。非売品で、国内外の教育機関や図書館などに寄贈した。一般からも「入手したい」との声が寄せられたため、今年に入って1000部を増刷し、税込み1500円で販売を始めた。
月100部超、異例の販売実績
ショップに並んだのは4月中旬。半月で96部が売れ、5月は141部、6月は117部を販売した。店内にある原爆・平和関連図書は約100種。そのうち、日本語に英語を併記した被爆証言や原爆漫画、絵本などは30種近くある。今回の英語版の販売実績について、ショップの担当者は「解説や写真記録などの基礎資料図書を除けば、月に100部以上売れた例は記憶になく、異例だ」と驚く。
原爆資料館への外国人の来館者は増加傾向にある。長崎市平和推進課がリーフレットの配布数を基に算出している外国人の入館者数は昨年度、17万3950人(速報値)で、統計を取り始めた02年度以降で最多となった。
購入者の9割以上が外国人
英語版を買い求めるのは外国人が9割以上を占めているという。ショップ側は「博士がカトリック教徒だったことに加え、原爆資料館の永井隆コーナーを見学して博士のことを知りたいと思ったからではないか」と購入理由を推測。「(購入者の)母国の人たちにも、著書を通じて平和の願いを発信してもらえればうれしい」とする。
今月出版された英訳のみの「長崎の鐘」(B6判)は、税込み990円。2000部印刷し、記念館とショップで取り扱っている。如己の会副理事長で長崎市永井隆記念館長の永井徳三郎さん(60)は「『長崎の鐘』は時代や国境を超えて胸を打つものがある。海外の多くの人の手に渡り、そこからまた読み継がれていってほしい」と期待している。



