柚子カクテルが世界に定着、和素材活かすバーテンダーアワードの熱意
柚子カクテル世界に定着、和素材活かすバーテンダーアワード

『サントリー ザ・バーテンダーアワード2026』ファイナリストの創作カクテルを体験できるイベント『SUNTORY THE FINALIST BAR Produced by THE BARTENDER AWARD』が、9月26日(土)・27日(日)に六本木ヒルズ ヒルズカフェ/スペースで開催された。全国から選出されたファイナリスト8名が、「あなたが世界に伝えたい日本発のカクテル」をテーマに制作したカクテルが来場者に振舞われた。

和素材が世界に広がる背景

2025年には2億8,890万米ドルに達し、2033年には8億4,880万米ドルにまで拡大すると予測されている日本のクラフトスピリッツ市場。その一端を担っているのが、柚子や桜、山椒といった和素材だ。本大会の課題製品である『サントリージャパニーズクラフトジンROKU』や『サントリージャパニーズクラフトウォッカHAKU』、『サントリーリキュールKANADE』にも、そういった原料が使われている。

なかでも柚子は、カクテル・飲料としてのトレンドが本格化し、抹茶やライチと並ぶ“グローバルフレーバー”として定着しつつあるという。ファイナリストの小笠原輔さん、野里史昭さん、生田理実さんの3名に話を聞いた。

和素材とクラシックの融合

「ハイボール、レモンサワーに続く『第3のソーダ割り』として、お客様が日々の食事と合わせて楽しむ日常酒になりたい」といった志から、ジン飲料『翠』が発売されて早6年。もはや日本産のジンは、食中酒として安定的な地位を築いている。

「レストランにも、ジンを食事とペアリングされるバーテンダーがいらっしゃりますよ。ハーバルなフレーバーだと、香草を使っている料理とも合うんでしょうね」と、洋食との相性の良さを指摘する小笠原さん。一方で、生田さんは和食との可能性を示唆する。「お料理で使われている素材と、ジンに含まれている素材を合わせることで、マリアージュするのかなと思います。和食屋さんだと、柚子の皮だけを使うことも多いと思うので、果実の部分を使ってカクテルやジントニックにすると、無駄なく両方使うことができていいですよね」

「ジュニペリー」というスパイスさえ使えば、他に使用するボタニカルに制限がなく、様々な素材と組み合わせられるジン。これまでも日本では、緑茶や桜、山椒など、多種多様な和ボタニカルを使いながら、差別化を図ってきた。昨今では、バーの現場でも和テイストなカクテルを求められることが増えているという。

「日本の柑橘が注目されているからこそ、海外の方からの人気が高い」と生田さんは語る。「普通のカクテル――、例えばホワイトレディでも『ROKU』を使いましたよ」と伝えると「Oh, nice!」って言っていただけて。ロンドンドライジンは、ジュニパーが効いていて、けっこうドライな味わいなんですけど、日本のジンは特有の甘味や繊細な香りがあって優しい仕上がり。鼻に抜ける強い香りが苦手な方にもオススメしやすいですし、フルーツとも相性がいいので、よく合わせます」(生田さん)

ファイナリストの想いが詰まった一杯

とはいえ、和テイストが求められているからといって、思いっきり振り切るわけでもない。「クラシックなカクテルに和素材をフュージョンさせる」と語るのは、小笠原さんだ。「和の要素や素材を入れつつ、普通のカクテルっぽい見た目に仕上げることが多いですね。海外から来た方も、日本に偏りすぎていないものを求めていると思うので。今回制作した『言の葉』も、クラシックカクテルの『ラストワード』から派生させているんです。カクテルは洋酒文化がベースになるので、フュージョンさせたスタイルが1番いいんじゃないかなと」(小笠原さん)

『AKATSUKI Martini』を制作した野里さんは、日本の洋酒文化と世界のカクテル文化を接続させるために、サントリーの原点である『赤玉・ゼロベルモット』を使用した。「“日本発のカクテル”と世界へ伝えるためには、世界の共通言語を使っていくべきだと思い、日本らしい“AKATSUKI”と世界で通用する“Martini”を合わせたカクテルにしました。日本伝統の保存食を世界にもアピールしたいという想いから、オリーブの代わりに干し梅を使っています」(野里さん)

かたや、『言の葉』を生み出した小笠原さんは、『六』を起点に、構想を深めていった。「『六』に入っている6種類のボタニカルを、全部重ねるイメージで作っていきました。柚子は柚子ハニージュース、桜は桜葉シロップ、山椒は木の芽といった感じで。6種類のボタニカル――、6つの植物を重ねることによって、幾重にも葉を重ねた『言の葉』になり、言語の壁を越えて飲む人の心に届きますようにという想いをこめています」(小笠原さん)

生田さんは、2025年3月のリニューアルを機に味わいが変化した『KANADE』を活かし、未知なる味へ挑戦した。「酸味が抑えられて、甘味のなかに柚子の苦味とほのかな柑橘の奥行があったので、塩麹酒粕ミルクと合わせてみました。すごく酸味が強い柚子だと、ミルクと合わせるのが難しかったんですよね。さっぱりとした柚子のカクテルは多いので、今回は甘味とマッチングした新しい味を表現しようと試みました」

柚子の浸透と今後の可能性

バーテンダーの想いを受け、新たな一面を覗かせ始めた和素材。なかでも和柑橘である柚子は、バーの現場でも使用頻度が増えてきているという。「海外のお客様にも柚子は認知されている」と話すのは、小笠原さんだ。「ホテルに勤めているので、海外のお客様もたくさんいらっしゃるんですけど、『ジャパニーズ・シトラス・柚子』と紹介すると、『知ってるよ』と言ってくださる方もいて。どこかで柚子のカクテルを召し上がった方から「柚子を持ってるの?」や「柚子の風味を利かせたジントニックやジンリッキーを頂戴」とリクエストをいただくこともけっこうあります」(小笠原さん)

柚子が浸透していると実感した時期について尋ねると、小笠原さんも生田さんも「コロナ禍以降」だと答えた。「コロナ明けくらいから、「この柑橘は何?」と訊かれて「柚子だよ」と伝えると、「柚子ね!」みたいな反応をいただくことが増えてきた印象があります。インバウンドの方が増えてくるにしたがって、認知度も上がっているように感じます」と小笠原さん。一方の生田さんは「私が住む街は神戸なので、国際線が通るようになった2、3年前くらい――、アジア圏の方がよくいらっしゃるようになってからだと思います。インバウンド需要にリンクして、というか。アジア圏の方はカクテルが好きで、日本のバー文化にも注目されている方が多いですね。柑橘はカクテルに絶対に必要なものですし、カクテルブームと重なって需要が高まっているように感じます」と口にした。

和柑橘・柚子需要に後押しされ、新たなレシピも増えたと生田さんは続ける。「『カナデアイ』で使わせてもらった『KANADE(柚子)』は、度数が40度あるので、海外のホワイトキュラソーの役割が出来るんです。それにより、これまでのレシピを日本的な風味に変えて提供できるようにもなってきました」(生田さん)

柚子ならではの魅力について、高知県出身の小笠原さんは「独特の酸味の立ち方」をあげた。「キリッとしすぎるところもあるので、今回は蜂蜜と合わせてバランスを取りました。主張が激しすぎるので、バランスは大切ですね」(小笠原さん)。対して生田さんは「苦味と香りのバランスの良さ・使いやすさ」をあげた。「酸味がありつつ、香り高いのが魅力ですかね。なおかつ、他の柑橘よりも使いやすい。昔から蜂蜜柚子酒などが流通していて、日本人に馴染み深いのも大きなポイントだと思います」(生田さん)

最後に、柚子を使ったカクテルの今後について訊くと、「柑橘としての役割は、もう果たしているように感じるので、コーヒーなど新しいものとの組み合わせによって、新たな可能性が広がっていくのではないでしょうか」(生田さん)、「すでに海外でも、柚子を知ってくれている方は多いので、国外でも柚子を使った製品に手が届きやすくなったら、もっと広がっていくかもしれないですね」(小笠原さん)と語った。