〝磯の王者〟とも呼ばれるサザエ。毎年夏が来れば思い出す、忘れてはいけない貝の一つだ。昨今の海水温上昇で餌となる海藻が激減していることに加え、輪島の海女いわく、雌雄のバランスが悪いらしく、減って貴重度が増しているという。
手頃な値段で楽しめる磯の巻き貝
普段使いではないが、かといってどこかで財布をはたいて食うほどの高級でもない。夏の浜や海の家で焼かれ、なんともかぐわしい強烈な魅惑の匂いを放つ磯の巻き貝の王様は、ちょっと気が向けば手に入る手頃なお値段で、万人に寄り添ってくれる間合いがたいへんよろしい。
生の身を薄く刺し身にすれば香りよくコリコリの歯応え。焼いたり煮たりすれば、うまみそのままに弾力強し。いずれもいささか硬いなというお方には、以下2つの方法をお勧めする。
硬さを和らげる調理法
ひとつは「水貝」。取り出して内臓を取り、身を半割にしてクチバシを切り除き、貝柱と足を氷塩水にしばし浸しておくと、身がリラックスするので薄切りよりもやわらかく食える。それでも硬ければこうだ。鍋にサザエの蓋を下にして並べ、鍋底に2センチほど水を注ぎ強火にかける。沸いて湯気が立ったなら蓋をして2分。簡単に身を取り出せるので、これを氷塩水で冷やすと、驚きのやわらかさとなる。
ついでながら苦みが苦手な人は、身と内臓の境目あたりを包んでいる外側のひだをつまみとっておけばよい。
夏の浜辺で味わう磯の香り
ともあれ夏に海水浴に出かけたなら、サザエを何個か炭火網に乗せて、プッと沸いたところに酒と醬油をひと差し。再度沸いたら皿に取り、やけどしないように軍手で押さえて竹串で身をらせん状にくるくると、きれいに尻尾まで取り出せたなら脳内に喝采が鳴り響く。
ハフハフかみ砕いていくうちに磯の香が鼻に抜け、舌上にはうまみや塩味や甘みだけでなく、爽やかなえぐみや苦みがじわじわ伝わってくるのがこの貝の真骨頂。飲み下した余韻は、まさに磯そのもの。日に焼けた少年はつかの間、すこしだけオトナの顔になる。



