カレーライス用に開発された鳥取県産の香り米「プリンセスかおり」が、販路拡大に苦戦している。販売開始から10年目を迎えたが、知名度は低いままだ。県内の生産者はわずか9人で、大幅な増産にはつながっていない。生産者らは販路拡大へ研究会を開催するなど、試行錯誤を続けている。
開発の経緯と特徴
プリンセスかおりは、2005~07年に鳥取市の1世帯当たりのカレールー消費量が全国1位になったことがきっかけで開発が始まった。市内のカレー愛好家らから、カレーに合う米品種の開発を県農業試験場が依頼された。
10年間の試行錯誤を経て、インドなどで高級香り米として知られるバスマティの香りを受け継ぐ「プリンセスサリー」とコシヒカリ系の品種を交配して完成し、2017年から販売を始めた。ポップコーンに似た甘香ばしい香りともちもちした食感の長粒米だ。
販路拡大の壁
カレー店やカレー愛好家からは好評を得ている。2025年は県内5.74ヘクタールで17.2トンを生産し、ほぼ完売。2026年は県内5.42ヘクタールで16.3トンが生産される予定だ。
しかし、生産拡大には課題がある。生産者の数は最も多かった年でも10人。富山県のメーカーがカレーに合うパックご飯として販売を始めた際に生産量が一時的に増えたが、以降はほぼ横ばいの状態が続く。
主な理由は扱いにくさだ。通常の米は売れ残った場合、他の米とブレンドして安価に売りさばくことも可能だが、香りなどに特徴があるプリンセスかおりは難しい。売れ残った際のリスクがある。
当初はJAも販売に携わったが、扱いにくさなどを理由に取り扱いを中止。今は生産者自ら販売している。県内で取り扱いがあるのは道の駅などの6店舗にとどまる。1株の稲から採れる量も少なく、通常の米に比べ2割ほど高いこともネックとなっている。
研究会での取り組み
県内で最も多い約7トンを生産する田中農場(八頭町)の田中里志社長(48)は「特徴が多いので簡単には売れない。お客さんへの提案も工夫が必要」と話す。
伸び悩む販路拡大へ向け、昨年度から関係者らによる研究会が始まった。県農業試験場の研究員や生産者、カレー商品を販売する会社の担当者らが集まり、アイデアを出し合っている。
今年7月に市内であった研究会には約10人が出席した。「タイ料理といったエスニックにも合う。カレー以外にも裾野が広がればいい」「単身用に一回使い切りサイズで販売するのはどうか」など意見を出し合った。炊き込みご飯やチャーハンなどのアレンジ料理も試食した。
開発に携わり、研究会にも参加した県農業試験場作物研究室の中村広樹室長は「一定数は売れているが、認知度向上や販売拡大はうまくいっておらず悔しい。鳥取のカレーライスと言えば『プリンセスかおり』となってほしいし、マーケットは世界にもある。継続的なPRなどで残していきたい」と思いを語った。



