中秋(旧暦8月15日)は今年9月25日。古典に登場する和の食材のルーツや現代の食卓にも生かせるレシピを、京都ノートルダム女子大名誉教授の鳥居本幸代さんに教えてもらう「古典と味わう四季」。今回は、いにしえの人々も愛した中秋の名月にちなみ、「月見団子」を紹介する。
平安時代の月見は詩歌管弦を楽しむ宴
中秋の頃に月を愛でる風習は中国から平安時代に伝わり、宮中では「月見の宴」が催された。月見といえば団子やススキをお供えし、夜空に浮かぶ月を眺めるイメージだが、平安時代には月明かりの下で詩歌管弦を楽しむものだった。「源氏物語」の「鈴虫」の巻には、冷泉院が開いた月見の宴に光源氏が参上する場面があり、若い貴族が笛を吹いたり、明け方まで漢詩や和歌を詠んだりする様子が描かれている。
当時、月には霊力があると考えられており、人々は直接見ることを避け、杯や池に映る姿を観賞した。中秋の頃に京都の大覚寺で開かれる「観月の夕べ」は、池に舟を浮かべて水面に映る月を愛でるという趣向で、いにしえの名残を今に伝えている。
江戸時代から続く団子のお供え、関東風と関西風
お供えに団子が登場するのは、恐らく江戸時代だろう。関東では丸い団子をピラミッドのように積み上げるのが主流だが、関西では俵状の団子にあんを巻き付けたものをよく見かける。今回は関東風のシンプルな団子に、秋の実りの栗で作ったあんを添えた。
栗は、奈良時代の歌人・山上憶良の有名な和歌「瓜食めば 子ども思ほゆ 栗食めば まして偲はゆ……」にも詠まれるように、古来親しまれてきた食材の一つだ。生の栗は下ごしらえが大変だが、市販の甘露煮を使うことで家庭でも気軽に栗あんを作ることができる。今回は小さな粒が残る程度に仕上げたが、つぶし加減はお好みでよい。
家庭でできる月見団子と栗あんの作り方
団子粉に水を加える際は分量より少なめにして、まとまりが悪いようなら少しずつ足していくとよい。できたての団子はもっちりとしてなめらかで、豊かな風味の栗あんとよく合う。
和菓子作りというと難しく感じるかもしれないが、スーパーで手に入る食材で簡単にできる。団子を丸める作業は子どももできるので、月見の歴史に思いをはせながら家族で団子作りを楽しんでみてはいかがだろうか。
材料(15個分)
団子粉100g、栗の甘露煮150g、栗の甘露煮の煮汁150cc
作り方
- 鍋に栗の甘露煮を入れてフォークなどで粗く潰す。
- 煮汁を加え、焦がさないよう5分ほど弱火で煮詰める。へらで混ぜた時に鍋底が見えるくらいの硬さになれば、火を止めて冷ます。
- 団子粉にぬるま湯80ccを少しずつ加え、手でよく混ぜる。耳たぶくらいの硬さになるまで練る。
- 棒状に延ばした団子を15等分にし、一つずつ丸める。
- 鍋に湯をわかし、団子を入れる。浮き上がってからさらに3分ゆで、冷水にとって冷やす。
- 団子を器に盛りつけ、栗あんを添える。
鳥居本幸代さんは京都市生まれ。平安前期の888年に創建された古刹・赤山禅院の門前で育った。著書に「阿闍梨さまの料理番 もっと知りたい精進料理」などがある。