富士宮やきそば、20周年で新たな展開
ご当地グルメ・富士宮やきそばが2006年の第1回B-1グランプリ受賞から20年を迎え、その伝承とやきそばを通した新たな交流を生み出す動きが官民で進められている。富士宮市は今夏以降、石川県珠洲市や岩手県大槌町など被災地を含む4市町へ「やきそば隊」を派遣し、住民らと「やきそば交流」を行う。
派遣先とのつながり
派遣先の4市町と富士宮市はそれぞれ縁がある。今年4月に大規模な山林火災に見舞われた大槌町とは、東日本大震災がきっかけで災害時相互応援協定を締結している。2024年の能登半島地震で大きな被害を受けた珠洲市との交流は18年前にさかのぼる。当時、商店街の集客減に悩む同市の女性有志が、街の集いの場で提供したいと目を付けたのが、06、07年とB-1グランプリを2連覇した富士宮やきそばだった。意気に感じた富士宮市の女性有志が調理法を伝授し、具材を送り、「能登の富士宮やきそば」は長く商店街を盛り上げる看板メニューとなった。
中心人物の増田恭子さん
その際、富士宮市側の中心だったのが、増田恭子さん(77)(県商店街振興組合連合会理事長)。4市町への今回の「やきそば隊」では、増田さんが代表理事を務める企業組合「富士宮・食のひらめき会」が市から依頼を受け、調理などを担う。珠洲市へは昨年9月に次いで2年連続の訪問になるが、「前回は珠洲市の事情がよくわからず、不完全燃焼だった」と増田さんは語る。その反省をふまえて今年は訪問を2回に分け、現地にとってどんな形が有意義なのかの意見交換をした上で、2回目の11月以降の訪問で「やきそば会」開催を予定する。
民間での伝承活動
20年の歳月を踏まえ、「富士宮やきそば学会」など民間でも伝承への動きを本格化させている。学会を運営するNPOでは6月から、「語り部育成アカデミー」と題した伝承活動をスタートした。渡辺孝秀代表(74)は「今の子どもたちは、我々が活動を始めた当時の盛り上がりを知らない」と動機を語る。
「富士宮やきそば」の商標管理会社「プロシューマー」は、これから富士宮やきそばを調理販売しようという全国の希望者を対象に、毎月講習会を開く。調理講習にとどまらず、座学に力を入れる。「伝えたいのは、富士宮の歴史や魅力。それらを知った上で、富士宮やきそばを提供してもらいたい」と社長の渡辺研介さん(39)と専務の渡辺彩さん(41)は口をそろえる。
全国からの受講者
これまでの受講者は北海道から沖縄まで。学園祭で提供したいと大学生の受講もあったという。6月の講習会に埼玉県川越市から訪れた男性(37)は「運営する障害者就労支援カフェの看板メニューにしたい。それだけ魅力あるブランドだと思います」と真剣な表情で聞き入っていた。



