新潟市中央区にある割烹「炭なじ」は、古民家を改装した店舗で、原始焼きと呼ばれる調理法で料理を提供し、県内外の日本食好きやインバウンド(訪日客)に人気を集めている。女将の野口沙羅さん(34)はかつて魚嫌いだったが、釣り系ユーチューバーとなり、やがておいしい魚料理を出す割烹の女将になった。
魚嫌いを克服したきっかけ
野口さんは幼い頃、親戚が集まった宴席で食べた刺し身が生臭く、それ以来魚を食べなくなった。克服できたのは、夫で店主の元気さん(38)の影響が大きいという。元気さんは当時自動車関連の会社員で、独立して割烹を開業するのが夢だった。
開業に向け、夫婦は令和元年に釣りのユーチューブチャンネル「釣りなじ」を開設。釣り初心者の野口さんがいろいろな魚を釣り、新鮮な魚を食べて克服していく様子を配信した。狙いは魚嫌いの克服だけでなく、ファンを作って将来の顧客獲得につなげることだった。実際、開業後は視聴者も来店している。
チャンネルの登録者数は現在約8000人。銀行に開業資金の融資を相談した際、担当者が視聴者で「これだけのファンがいれば、お金を貸せます」と言ってくれたという。また、「にいがたフィッシングショー」にも8年まで3年連続でゲスト枠で招待され、釣り用ウエアでランウェイを歩いた。3年には粟島浦村沖で96センチのブリと123センチのクロマグロを釣り上げた。
訪日客にも人気の店
炭なじは5年7月にグランドオープンし、3周年を迎えた。店内はカウンター席が10席で、いろりで食材を原始焼きにして提供する。原始焼きは炭火でじっくり串焼きにする調理法で、うまみが凝縮され、身がふっくらと焼き上がるのが特徴だ。
料理は全て店主のお任せで3つのコースを用意。一番人気の「ゆったり炭なじコース」は全10~12品で1万3200円。野口さんが早朝に釣った高級魚マゴチなども提供し、料理に合う日本酒のペアリングも行う。完全予約制で、平日は約1週間先、土曜日は約2カ月先まで予約が埋まっている。
客の約6割が新潟県内、約4割がインバウンドを含む県外。海外では台湾や香港などアジア圏が多く、インフルエンサーがSNSで取り上げたのを見て来店するケースが多いという。
新潟の食文化を次世代へ
店では「笹川流れ」(村上市)の名産品である藻塩で旬の魚を焼いて提供する。野口さんは「藻塩のうまみ成分は、魚との相性がすごくいい」と話す。新潟には山、海、川、平野があり、さまざまな食材がある。「豊富な食材で育まれてきた新潟の食文化を、料理を通じて、子供や孫の世代に残していければ」と語る。
8年中にはユーチューブの新チャンネルを立ち上げる予定で、店で出した魚を釣るシーンや市場での目利き、料理に込めた思いを語るシーンなどを動画にし、食事後も楽しめるチャンネルを目指す。



