ホラー系YouTubeチャンネルの先駆け『ゾゾゾ』が、オリコンニュースの独占インタビューに応じた。2018年の開設以来、登録者数100万人を突破し、今も根強い人気を誇る同チャンネル。ディレクターの皆口大地氏と、メインパーソナリティーの落合陽平が、チャンネル誕生の経緯や動画制作の裏側、ホラーコンテンツが急拡大する現状について語った。
「やってみよう!」から始まった『ゾゾゾ』
チャンネル誕生のきっかけは、皆口氏が落合が社長を務めていたベンチャー企業に入社したことだった。ある上司との雑談で「やりたい事業はないか」と聞かれ、「ホラーポータルサイトを立ち上げたい」と答えたのが始まりだという。当初は会社の事業として、心霊スポットをデータベース化する「食べログのようなサイト」を構想していた。
落合は「お酒を飲んだ時に皆口くんから『やりたいんですよね』と言われた記憶がある」と振り返る。会社の役員を説得するのは難しいと感じつつも、「意志を感じたので、副業かなんかで個人的にやるんだったら手伝うよ」と伝えた。すると「あの第1話ですよ。ほんとに『え?』っていう感じで、そのときにYouTubeに出すって知った」と明かす。
皆口氏は「まずやってみようが先行しました」と話す。別の上司から「どうやって集めるの?」「そのお金はどうするの?」と詰められ悶々としていたが、心霊スポットに行って怖かったかどうかをレビューし、その過程を動画にすればデータベース作りができると思い「やってしまえ!」と決意した。
「視聴者の代表」としての自然体
動画の方向性について、皆口氏は「自分が好きで見てきたホラーの文脈みたいなものは大切にしています。自分が好きなホラーはこういうことしないとか、こういうこと言わないよね、みたいな。こうした感覚は『ゾゾゾ』でも大事にしています」と語る。
落合は「感じたことをそのまんま出そうと考えています」とし、「『落合さんは視聴者の代表だから』と。『本当は怖いのに怖くないふりをするとか、そういうのは一切しなくていい。そのまま、感じたことを表現してください』って皆口くんから伝えられた」と明かす。皆口氏は「落合さんって、昔からお調子者で。動画にするとなると、変に自分を作ってしまうんじゃないかと思った。『自分が面白くするので、落合さんは自然体で出てください』といったニュアンスで伝えました」と補足した。
内田雅士さんや長尾将三郎さんら出演者については、皆口氏は「動画を撮影して見て、二人きりって結構大変だったので、2話目で内田にスタッフとして入ってもらった。長尾くんにも自然な流れで声を掛けていました」と説明。落合は「キャラクターに関しては、一緒に動画を作っていく中で自然と分岐していった気がします」と語る。
「やっと見つけてもらえた」転機とこだわり
波に乗った瞬間について、皆口氏は「明確にありました」と明かす。現在は非公開となっている第12回『白い家とお化け坂』(2018年11月)が明確に跳ねたという。「それまでは再生回数が100回いったら拍手ぐらいのスピード感だった」が、公開翌日の撮影時には「もう300回、道中で500回と増えて、登録者数も急増した」。あまりの伸びに落合が「お金で買ったんじゃないか」と思ったほどだったが、皆口氏は「良いものを作っている自負はあったので、『なんでこんなものが?』っていう驚きは一切なかった。やっと見つけてもらえたかなって思いました」と振り返る。
制作で大切にしていることについて、皆口氏は「作るものにものすごい愛着がある」とし、「ゾゾゾは生配信もやらない。見ても見なくてもいいものは絶対に出したくない。『出したものは絶対見てください。面白いので!』っていうスタンスは1話目から変わらないです」と語る。
ジャンル分けについては「誤解を恐れずに言うと『エンターテイメント』です」と皆口氏。ドキュメンタリーと名乗る選択肢もあったが、「ドキュメンタリーと名乗ってしまうとおそらく『ゾゾゾ』のやりたいこと、可能性を狭めてしまう」とし、「ちゃんとドキュメンタリーで勝負している方々にも失礼に当たるのではと思い、これはエンターテイメント番組にしようと思いました。ただの自称ですが」と語る。
撮影の裏側と「お祓い」事情
撮影場所の確保は困難を極めるという。皆口氏は「撮影の許可を取る際、奇跡的に連絡先がわかるところは、電話やメールもしますけど、そういった場所はほとんどないです。やっぱり現地に行って住所を調べたりして」と説明。「所有者がわからないことがほとんどですし、『いいよ』って言ってくれる場所は少しです。だから撮影を断念する場所はたくさんありました」と明かす。
これまでの現場で印象に残っている場所について、落合は「身の危険を肌で感じたのは、『首狩り神社』『取り残された廃屋』の2ヶ所ですね。心霊的な怖さとは別次元の恐怖です」と語る。一昨年行ったタイの廃病院では「儀式の跡があったりして、本当に絶望した」といい、「初めて怖すぎて身体が動かなくなりました。途中大きな音とか鳴るんですけど、もう走れないんです。想像の範疇を超えた現象ってあるんだなと」と振り返った。
お祓いについては、落合が「メンバーみんなでとか、会社でお金出してってことは一度もないんですよね(笑)」と話すと、皆口氏は「視聴者さんが心配してくださって、塩をよくもらうんです。だからそれを持って帰ったりしています」と明かす。落合は「お祓いに行くんですか?ってよく聞かれるんですけど…おそらく自分はホラーというものに深入りしていないから、深く考えないんだと思います(笑)」と語った。
100万登録の理由と「ゾゾゾらしさ」
支持される理由について、皆口氏は「やっぱり見なくてもいいような作品は出してない。それが視聴者の方にも伝わっているのかなと思います。信頼関係じゃないですけど、『ゾゾゾ』の新作は間違いないよって」と語る。落合は「緩急があるところが『ゾゾゾ』ならではの部分なんじゃないかと思います。笑えたり、笑えなかったり、動画の中にそういう要素がちりばめられている」と分析する。
「ゾゾゾらしさ」が凝縮されているエピソードについて、皆口氏は今年の夏の特別編2026を挙げる。「これは宣伝ではなくて、本当に今までの中で最も『ゾゾゾ』らしいかもしれない。笑えるところも、怖いところも惜しみなく。両方がすごい主張しているんです。落合さんが話していた『らしさ』みたいなところが、120パーセントぐらい詰まっているんじゃないかなっていう気はしています」と語る。
今後の展望については「今こうして多くの方々に見てもらえている状況に満足しているので、さらに上を目指すぞみたいな気持ちはあまりないんですが、2年後にはチャンネル開設10周年を迎えるんです。だから10周年はいろいろやりたいという気持ちはありますね」と話した。
空前のホラーブームへの本音
ホラーが人を引き付ける理由について、皆口氏は「ホラーって好きか嫌いかの二択だと思うんです。良くも悪くも人はホラーに囚われてしまっているんだと思うんです。僕自身も囚われている人の一員ですし」と語る。
ブームの背景について、落合は「個人的には間違いなくSNSとか、YouTubeを筆頭とした配信によって、ホラーに今まで触れなかった人たちがどんどん触れる機会ができたからだと思う」と分析。「昔だったら、ホラーって映画とかDVDとかお金を払って能動的に見に行くものだったけど、今はSNSでバンバン流れてくる。だからちょっとしたきっかけでアクセスしちゃいますよね」と語る。
ホラーコンテンツの急増について、皆口氏は「世の中がホラーであふれるっていうのは非常にうれしいこと」としつつ、「最近はなんだか急速に消費されちゃっている気がしています。今がバブルじゃないことを願いますが。弾けちゃうとホラーがまたアンダーグラウンドなものになってしまいますし、その危機感を少しずつ感じているからこそ、流行りには良い意味で影響されないように意識しています」と本音を明かす。
落合は「間違いなく淘汰はされていきますよね。『ゾゾゾ』というコンテンツはホラーが流行ったから何かをしている、動画を出すということは一度もしていない。だから僕たちとしては良いと思う作品を愚直にやるだけかなと思います」と語る。AI技術については、落合は「ホラーって最新技術を駆使したり、莫大な製作費を掛けたりしたから、めちゃくちゃ面白い作品ができるかと言ったら、そうじゃない。皆口くんはよく『ホラーはアイデア勝負だ』って言っていますからね」と話し、皆口氏は「AIがホラー業界に参入して、人を怖がらせることができるのか、ちょっと見てみたいですね。どんなストーリー、描写なのか。個人的に興味はありますね」と語った。
『ゾゾゾ』は2018年6月から動画公開をスタート。メインパーソナリティー・落合陽平らが心霊スポットや恐怖ゾーンといった日本全国のゾゾゾスポットをレポートするホラーエンタテイメント番組で、現在の登録者数は約111万人を誇る。



