数学者で東京理科大学栄誉教授の秋山仁さん(80)と、プロ野球福岡ソフトバンクホークス元監督の秋山幸二さん(64)のトークショーが12日、福岡市博多区で開かれた。23年前、福岡県内の中学校が企画した講演会で、秋山さん違いで呼ばれた幸二さんが急きょ仁さんの「代打」講師を務めた騒動後、初めて対談が実現した。2人は「あの日のおかげで素晴らしい出会いが生まれた」と笑顔で語った。
「代打」快く引き受け
2003年11月、同県椎田町(現・築上町)の椎田中が、体育館の完成記念式典で仁さんの講演会を発案した際、仲介した関係者が勘違いして幸二さんに講師を依頼した。幸二さんは慌てる学校関係者を見て代役を快く引き受け、仁さん用の演題「デッカイ夢さえあればなんとかなるさ」に合わせ、約1時間半の講演をやり遂げた。
初対談は、仁さんを取り上げた読売新聞の連載「時代の証言者」を読み、2人が直接会ったことがないことを知った福岡県立スポーツ科学情報センター「アクシオン福岡」の職員が企画。会場には、当初予定の2倍を超える約250人の親子連れらが詰めかけた。
「早とちりに感謝」
冒頭、幸二さんは「(関係者が)大変だろうと思って軽い気持ちで引き受けたが、(自分で)よかったのかなと今も思っています」とはにかみながら切り出した。仁さんは「早とちりした多くの人に本当に心の底から感謝します。間違えてくれてありがとう」と頭を下げ、会場は笑い声に包まれた。
その後、2人は23年前と同じ「夢」をテーマに語り合った。仁さんが、算数や数学の勉強につまずいた子どもへのアドバイスとして「前の学年に遡ってやるといい。積み重ねてやれば必ずできるようになる」と話すと、幸二さんは「元に戻って繰り返すのは野球も同じです」と応じた。
「数学やったら」
質疑応答のコーナーでは、会場からの「今、夢はありますか」との質問に、幸二さんは「また探している最中なんです」と回答。仁さんが「数学をやったら」と水を向けると、「僕らは数字で評価されているので、数字は好きですよ」と笑顔で返していた。
仁さんはこの日、幾何学の専門知識を生かし、幸二さんがかつてプレーした西武ライオンズの象徴「ライオン」がホークスの「タカ」に変化する自作の図形を幸二さんにプレゼント。幸二さんが「想像力を働かせて取り組むことが大切なんです」と強調すると、来場者は大きくうなずいていた。
当時の校長もカナダから駆けつける
会場には、23年前に椎田中の校長だった白川修三さん(75)も訪れた。当時の出来事が「ずっと心残りだった」という白川さんは、トークショーの開催を伝える本紙記事を読み、「この機会を逃したら二度とない」と長期滞在先のカナダから駆け付けた。終了後、2人と握手を交わし、「お二人の思いやりに救われた。お会いできて本当によかった」と顔を綻ばせた。
幸二さんは「専門は違うが、実際に秋山先生と話して親近感を持てた。本当に楽しい時間を過ごさせてもらった」と述べ、この日に80歳の誕生日を迎えた仁さんは「人生は出会いに始まり、思わぬ形に発展していくから面白い。この出会いを大切にするために秋山幸二さんに年賀状を書きたい」と目を細めた。
数学と野球というそれぞれの道を極め、奇遇の縁がつないだ2人の交流は続きそうだ。