2026年7月8日、東京都内で行われた『第52回放送文化基金賞贈呈式』において、TBSテレビの西村匡史記者が「放送文化部門」を受賞した。受賞理由は『17年にわたる「死刑」当事者の肉声記録と番組の制作』であり、長年にわたる死刑制度の取材と発信が高く評価された。
17年にわたる死刑取材の軌跡
西村記者は2009年の裁判員制度開始以降、17年間にわたり死刑の取材を継続してきた。国が死刑の実態を詳細に開示しない中で、死刑囚やその家族、被害者遺族の肉声を原則実名・顔出しで記録し続けた。また、カメラ取材が禁じられている拘置所の面会室では、TBSの法廷画家・根本真一氏を同席させ、イラストによって死刑囚の実態を伝える手法を開拓。この試みは放送界に大きな影響を与えた。
西村記者は『報道特集』や『映画』、反響を呼んだ『配信記事』など多角的な手段で発信し、社会に死刑の意義を問い続けている。選考理由では「死刑囚とその家族、被害者の遺族、さらに死刑の判断を下した人々の思いまでを深く聞きとる。まさに死刑当事者の肉声を17年にわたり記録し続け、制作してきた番組の数々は、番組として優れているだけでなく、日本人に死刑制度についての熟考を促す力を持つ」と評価された。
西村記者のスピーチと受賞の意義
贈呈式で西村記者はトロフィーを受け取り、次のようにスピーチした。「2009年に一般市民の誰もが死刑の判断を迫られる裁判員制度が始まりました。死刑の実態を知らされないまま、重い判断を背負うのは不当だと思って取材を始めました。日本の拘置所では、死刑囚のテレビカメラでのインタビューが認められていません。そのため、TBSの法廷画家、根本真一さんに同席してもらって、その様子を描きました。これまで、死刑囚本人やその家族、被害者の遺族、そして死刑判断を下した裁判員に原則実名・顔出しで取材しました。一人ひとりに死刑について、他人事ではなく、自分事として考えてもらうためです。今回の受賞は、そうした重い負担を背負ってくださった当事者の勇気に送られるのだと思っております。ありがとうございました」
同部門では他に、沖縄テレビ放送の「郷土劇場」制作チーム、北海道放送のアイヌ差別取材班、NHK「ディープオーシャン」シリーズ制作チームが受賞した。
放送文化基金賞の概要
第52回放送文化基金賞は、過去1年間(2025年4月~2026年3月)に放送・配信された番組やコンテンツ、個人、グループを対象としている。全国の民放、NHK、動画配信会社などから計317件の応募・推薦があり、4月から約2か月にわたる厳正な審査が行われた。ドキュメンタリー、ドラマ、エンターテインメント、ラジオの4部門で最優秀賞、優秀賞、奨励賞の16作品、演技賞や企画・制作賞などの個人7件、放送文化・放送技術部門で8件、特別賞1件の受賞が決定した。



