透明度の高い海が広がる田舎への帰省。漫画家の倉田真由美が55歳で感じた「愛するものたちの老い」と切なさの行方を綴った。
人気のない河原でのひととき
数十分後、目的地の駐車場に着くと、案の定ほとんど車は駐まっていない。早く外に出たくてたまらない犬を車から降ろし、私たちは河原に降り立った。川幅も狭く、川底までも浅い清流に足を浸す。
「人、いなくてよかったね」
さらに上流を目指しながら、私たちは川の中を犬と一緒にジャブジャブ歩く。岩場なので歩きにくいが、川の水は海水よりもずっと冷たく、木陰があって涼をとるには最高の場所だ。
しばらく歩いて、橋の下の陰になっているところで少し休んだ。私と妹は岩に腰掛け、犬は落ちている木の棒などを噛んだりして遊び、娘は岩をめくって「あ、カニだ!」などと、普段都内ではなかなかできない体験をした。
サワガニの唐揚げの思い出
「サワガニ、私たちが子どもの頃、獲って帰って家で食べたよね」
私が言うと、妹も覚えていて「うん。殻が硬かった記憶がある」とうなずいた。
「サワガニの唐揚げ、結構好きだったなあ。パリパリしておいしかったよ」
私は皿に山盛りになったサワガニを思い出しながらつぶやいた。もう一度食べたいなと思わないでもないが、だからといって今サワガニを獲って帰って油で揚げようとは思えない。両親は私たちに珍しい体験をさせてくれたものだと、今さらながら感心した。
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