池上遼一氏と名コンビ、小学館の仕事は二度とやらないと言ったのに…武論尊氏が語る共作の舞台裏
池上遼一氏との共作、武論尊氏が語る舞台裏

漫画原作者の武論尊氏が、長年コンビを組む漫画家・池上遼一氏との共作秘話を語った。初共作で小学館と衝突し「小学館の仕事は二度とやりません」と言った経緯や、再びタッグを組むことになった経緯、『HEAT―灼熱―』での小学館漫画賞受賞、『覇―LORD―』への後悔などを明かした。

初共作で小学館と衝突

『サンクチュアリ』(小学館「ビッグコミックスペリオール」で平成2~7年連載。もうひとつのペンネーム「史村翔」として原作を担当)は、池上氏と初共作の読み切りから3作目だったのではないかという。武論尊氏は「あんまり覚えてないんですよ。その…池上先生のことで小学館とけんかしてたんで。表向きは2作目かな。けんかした作品の次ですね」と振り返る。

『サンクチュアリ』の主人公が、カンボジアで両親をなくしたヤクザだったことについては「あ、それは後付け」と説明。「編集者とストーリーを考えているときに、この2人の関係を密にするにはどうしようかっていうんで、じゃあカンボジアの難民になった孤児にしようって。そこで昔、カンボジアに行ってた記憶を引っ張り出して参考にした、って感じですね。最初からカンボジアがあったわけじゃなくて」と語る。

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「小学館の仕事は二度とやりません」

池上氏の絵については「もう、原作者としてはあこがれの的ですから。誰もが組みたいんですよ」と絶賛。しかし1作目のときに担当の上司から「過激すぎると怒られた。『お前は池上を潰すつもりか』って」といい、「私はムカッとして、『小学館の仕事は二度とやりませんから』って言った覚えがあります。で、しばらくやってないんですよ。3年くらい。一方的に『ふざけんじゃねえ』って思ってますから。で、その人はすごく出世したんですけど、ずっと一言も口を利かなかったんですよ」と明かす。

その後、ひょんなことから再び池上氏と組むことに。「池上さんがちょっと休みができて。で、担当者が私のところに『池上さんが空いたけど、お前やるか?』って。その瞬間に、『池上さんとだったら、やります』ってなりました。違う担当者だったんで、けんかしたのを忘れてたんですよ。声をかけてくれてラッキーだったです。小学館の仕事は二度とやらないって言ってたのに」と振り返る。

『HEAT―灼熱―』で小学館漫画賞

その後も池上氏との共作は続き、『HEAT―灼熱―』では、武論尊氏と池上遼一氏がそろって小学館漫画賞を受賞した。武論尊氏は「『サンクチュアリ』以降は、そんなに当たってなくて、池上さんが初めて私に注文を出したんですよ。『ぼちぼちエンターテインメント(暴力系)やらない? 昔に戻って面白いの書かない?』って。それまでずっと『史村翔』で書いてたんですけど、『武論尊』に戻らない? って。『武論尊』っていったらエンターテインメント、暴力漫画ですから。池上さんがそっちを描きたいっていうから、『分かりました』って言って、『HEAT―灼熱―』になったんですよ。で、この作品で少し持ち直して、小学館漫画賞をもらったのかな」と語る。

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さらに「それまで池上さんは相当フラストレーションがたまってたんじゃないですかね。私が一方的に描いてもらいましたから、自分の書きたいものを。池上さんは違うの描きたかったんだな、って後で気が付いて。池上さんの中ではあったんじゃないですか、私が書きたいものと池上さんが描きたいものがズレ出したっていうのが」と分析。「池上さんのコンセプトは『街のラーメン屋さんに油に汚れて置いてあるような本を描こうね』なんです。『今のあんたのは違う。きれいな美容院にあるような本だよ』と。その違いですね」と明かす。

『覇―LORD―』への後悔

その後、三国志を題材にした『覇―LORD―』をビッグコミックスペリオールで連載した。「そこそこ売れたんですけど、もうちょっと頑張ればもっと当たったのにな、と後悔している作品です。今思うと、もったいなかったですね」と述べている。