三十分ほどすると、その車が戻ってきた。思ったとおり乗っていたのは伊達だった。
阿岐本の推測
阿岐本が言った。「時間から考えて、たいした工事じゃないな」と。日村も「そうでしょうね」と応じる。
「本当に電球を取り替えに行ったのかもしれない」と阿岐本が続けると、日村は「あれは昇さんが話を盛ったんでしょう。いくら何でも電球を取り替えるために技術者の伊達さんが出かけることはないでしょう」と反論する。
「もちろん、電球だけってこたあねえだろう。ついでに何かやってくるんじゃねえのか」と阿岐本が問いかけ、日村は「何かって何でしょう?」と疑問を呈する。阿岐本は「さあな。その辺のことはまた、伊達さんに訊かなくちゃならねえだろうなあ」と含みを持たせた。
営業車の動きと阿岐本の合点
その後も、営業車が出ていった。やはり一時間と経たないうちに戻ってくる。
「なるほどねえ……」阿岐本がつぶやくように言った。何が「なるほど」なのだろう。日村がそう思ったとき、阿岐本は言った。「さて、事務所に戻ろうか」
日村は阿岐本の言葉の真意を測りかねながらも、その観察眼に感心する。伊達の行動や営業車の短時間往復が、何らかの組織的な動きを示唆しているのか、阿岐本は既に見抜いているようだ。



