北海道のジャズシーンを担う次世代の育成が着実に実を結んでいる。広尾町の小学4年、野村帆乃さん(10)は6月、帯広市のイベントでビッグバンドの一員として哀調を帯びたトランペットのメロディーを披露した。演奏したのは、若くして亡くなったトランペット奏者を追悼するために70年前に作られた名曲「クリフォードの想い出」の一節。野村さんは小学1年から通う「広尾サンタランド・ジャズスクール」のビッグバンドで、小学生から高校生まで9人の中心として抑揚のあるフレーズを堂々と吹き上げ、大きな拍手を浴びた。
スクール代表も驚く成長ぶり
「音はまだ小さいが、表現力があり、確実に成長している。もはやサンタランドのスターです」とスクール代表の石原秀樹さん(52)は野村さんの成長に舌を巻く。かつてはうまくいかずに泣くこともあったが、先輩の中学生の上達ぶりを見て刺激を受けたという。「子供たちって、ある日突然、飛躍するんですよ」と石原さん。野村さん自身も「音を外さなくて良かった。トランペット大好き!」と無邪気に笑った。
北海道ジャズ育成の歴史と広がり
道内のジャズスクールによる次世代育成は、札幌市で開かれるジャズの祭典「サッポロ・シティ・ジャズ(SCJ)」の通年事業の一環でもある。先駆けは2001年から通年活動する「札幌ジュニアジャズスクール」。当初は小学生のみだったが、2003年から中学生も加わった。2013年には「北海道ジャズの種プロジェクト」がスタートし、広尾サンタランドのほか砂川市、幕別町、倶知安町などにも活動が拡大。道内のジャズスクール卒業生は延べ1000人を超え、プロサックス奏者の馬場智章さん(34)やドラム奏者の石若駿さん(34)らを輩出している。
指導者が語る子供の可能性
「広尾サンタ」で指導を続けるサックス奏者・作曲家の小野健悟さん(53)は「子供の才能は、あちこちにあるんです。それを引き出してあげることが大事」と語る。「かっこいい演奏ができると、みんなキラキラ輝く。ジャズは、子供たちにすばらしい世界を広げてくれる」とその意義を強調する。
サッポロ・シティ・ジャズ前のキックオフライブ
18日から札幌市中心部で始まる「サッポロ・シティ・ジャズ2026」(実行委員会、読売新聞北海道支社など主催)を前に、12日には中学生らによる「キック・オフ・ライブ」が札幌市中央区のさっぽろ地下街オーロラプラザで行われた。出演したのは「札幌ジュニアジャズスクール」の中学生クラスで学ぶビッグバンド「Club SJF」の11人。講師のトランペット奏者、中嶋和哉さん(59)も加わり、アップテンポな名曲を披露。道行く人々は若さあふれる演奏に盛んに拍手を送った。サックスを演奏した札幌市立藻岩中3年の山崎菜央さん(14)は「集中して演奏できて良かった」と話した。
ジャズ王国・北海道の未来
次々と花開く若き才能は、これからも「ジャズ王国・北海道」を支えていくに違いない。野村さんのような子どもたちの成長が、道内のジャズシーンに新たな風を吹き込んでいる。



