「ハリー・ポッター」振付師が語る死喰い人の恐怖、初のハロウィーン企画が東京で開催
「ハリー・ポッター」振付師が語る死喰い人の恐怖、東京で初のハロウィーン企画

映画「ハリー・ポッター」シリーズの制作舞台裏を体験できる「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京 - メイキング・オブ・ハリー・ポッター」(東京・練馬区)で、9月10日から11月8日まで開業以来初のハロウィーン特別企画「闇の魔術のハロウィーン」が開催される。期間中、大広間には無数のジャック・オー・ランタンが浮かび、館内のいたるところに死喰い人が出現。危険で不穏な空気に包まれた体験ができる。

「デスイーター デモンストレーション」日本初上陸

イベントの目玉は、魔法省のセットを舞台にしたライブパフォーマンス「デスイーター デモンストレーション」。ロンドンのスタジオツアーで人気を博した演出が日本に初上陸し、死喰い人たちが来場者を映画さながらの“闇の魔術”の世界へ引き込む。演出と振付を手がけるのは、映画シリーズで杖を使った魔法戦「ワンド・コンバット」の動きを生み出した振付師ポール・ハリス氏。『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』(2007年)以降、魔法使いたちの戦いに優雅さと脅威をもたらした独自の“身体言語”を作り上げた人物だ。

パフォーマンスでは、映画で用いられた攻撃と防御、計10種類の杖のポジションを基に、ダンスを思わせる流麗な動きを組み合わせ、死喰い人の威圧感と不穏な存在感を表現する。

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「ワンド・コンバット」誕生の舞台裏

「ワンド・コンバット」は、デヴィッド・イェーツ監督からかかってきた一本の電話をきっかけに誕生した。2006年6月のある日、イェーツ監督から電話を受けたハリス氏は「彼は『君にやってもらいたい仕事がある』と言いました」と振り返る。二人の関係は約10年前、イェーツ監督の長編映画デビュー作『The Tichborne Claimant』(1998年公開)の撮影現場で出会ったことにさかのぼる。偶然にも同じ町の出身で年齢も近く、その後もテレビシリーズなどで仕事を重ね、友人としての関係を築いていった。

『不死鳥の騎士団』でシリーズ初監督を務めたイェーツ監督は、ハリス氏に魔法使い同士の戦闘を表現する新たな動きの体系づくりを依頼。「デヴィッドは何度も、『ダンスのようでなければいけない』『優美さと芸術性が必要だ』と言っていました。一方で、『武術映画のようには見せたくない』という要望も明確でした」とハリス氏は語る。

イェーツ監督から「呪文ごとに決まった動きを作ってほしい」と求められたが、ハリス氏は「それはできない」と伝えた。過去の作品には、アラン・リックマン演じるセブルス・スネイプやケネス・ブラナー演じるギルデロイ・ロックハートの構えに、フェンシングやステージコンバットの影響が見て取れた。第2作『ハリー・ポッターと秘密の部屋』(2002年)では、決闘クラブでハリーとドラコ・マルフォイが異なる呪文を唱えながら同じような構えを取っていた。「一つの呪文と一つのポジションを結び付けることはできないと思いました。今後の映画には、声に出さずに使う無言呪文も登場します。呪文ごとに専用のポーズを作れば、魔法の世界はすぐに窮屈になってしまいます」と説明する。

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死喰い人の恐ろしさは身体から生まれる

着想を得たのは、ハリス氏が長年親しんできたバレエだった。「どれほど複雑な振り付けであっても、バレエの動きはすべて5つの基本ポジションから派生しています。魔法の動きも、同じように作れるはずだと考えました」。さらに当時、娘が学んでいた伝統的な中国武術「虎鶴双形拳」にも目を向け、バレエの基本姿勢とカンフーの構えに共通点を見いだした。こうして、個々の呪文にポーズを与えるのではなく、攻撃と防御の基本姿勢からさまざまな動きが派生する“魔法使いの身体言語”が作られた。「僕が作ったのは呪文ではありません。呪文を作ったのはJ.K.ローリングです。僕が作ったのは、その呪文をどのように放つかという身体表現です。言うなれば、魔法の言葉を書いたのではなく、“魔法の文法”を作ったのです」と語る。

基本となる体系を作る一方、全員を同じ動きにはしなかった。それぞれの俳優が作り上げたキャラクターの個性を尊重したという。ベラトリックス・レストレンジを演じたヘレナ・ボナム=カーターは、自身の爪の形に合わせ杖も曲がったデザインにしたいと希望。ヴォルデモートを演じたレイフ・ファインズにも、すでに独自の杖の持ち方があった。「僕の仕事は、全員の動きを同じにすることではありません。それぞれのキャラクターらしさを残しながら、一つの体系の中に組み込むことでした」と話す。死喰い人の恐ろしさも、重心移動や歩き方、体の向き、相手との距離の取り方まで、常に脅威として見えるように設計した。「恐ろしさは武器ではなく、身体から生まれるのです」と語る。

東京のダンサーを「ロンドンと同等、あるいはそれ以上」と称賛

映画とライブパフォーマンスでは、演出するうえで求められるものが異なる。映画は複数の映像を編集して一つの場面を作り上げられるが、ライブパフォーマンスは観客の目の前で途切れることなく進んでいく。そのため、動きに説得力を持たせながら緊張感を持続させることが重要になる。「観客の注意を引きつけ続けなければなりません。同時に、“実際に人がそう動くかもしれない”と感じてもらえる、説得力のある表現も必要です」と説明する。

今回のパフォーマンスは音楽やナレーションと連動しながら展開するため、演者には高い身体能力に加え、音楽のリズムや展開を正確に捉える力も求められる。東京で集められたダンサーたちについて、ハリス氏は「ロンドンと同等、あるいはそれ以上」と称賛する。「優れたダンサーは、どこの国の出身であっても優れたダンサーです。東京で集まってくれた皆さんは、本当に素晴らしい。必要なことを理解したうえで、適切な人たちが集められています」と語った。日本語と英語のナレーションは、ハリス氏がロンドンの演劇学校で教えていた日本人の元教え子が担当し、死喰い人としてパフォーマンスにも出演する。

「ハリー・ポッター」が長く愛されている理由について、ハリス氏は「登場人物の深さ」に見いだす。「長く愛される作品は、登場人物に深みがあるのだと思います。最も分かりやすい例がシェイクスピアです。作品が生まれてから400年以上経っていても、僕たちは登場人物に共感できます。『ハリー・ポッター』も魔法の世界を舞台にしながら、人々は登場人物に自分を重ねることができます。それは、物語の書き方が本当に優れているからです。すべての核にあるのは物語です。僕が身体表現を作るうえでも、常に物語が道しるべになりました」と締めくくった。