漫画原作者の武論尊氏が、人気絶頂期に『サンクチュアリ』の連載を中断し、北海道の競走馬牧場へ逃亡した経験を明かした。「このまま書いてたら俺、壊れるな」という切羽詰まった感覚があったという。
自衛隊時代から続く「ばくち」との関わり
武論尊氏は、自衛隊生徒時代から競艇、オートレース、競輪、競馬など、あらゆる公営ギャンブルに親しんでいた。15歳で自衛隊に入り制服を着ていたため、周囲からは大人と見なされ、たばこや酒も一般的な社会人と同じように楽しんでいたという。
中でも競馬は「一番身近」だったと振り返る。自衛隊を辞めて東京に来てからは、世田谷区の梅丘や杉並区の荻窪にある場外馬券売り場に通い、定職に就かず友人宅を転々とする生活を送っていた。
時給150円の皿洗いと命がけの馬券
22歳で自衛隊を辞め、23歳頃から始めた皿洗いのバイトは時給150円。6時間働いて900円を稼ぎ、そのまま馬券を買いに行く日々だった。馬券1枚100円が「命がけ」だと語り、飯代を削ってでも買っていたという。
競馬新聞は買えず、スポーツ紙の予想を参考に「2倍になる堅い馬券」だけを狙っていた。500円が1000円になれば、それは1日の稼ぎの半分に相当する。テラ銭を取られると分かっていても、「1日の給料900円が3倍になって返ってきたら、3日バイトを休める」という期待がやめられなかったと明かす。
「リセット」としての北海道逃避行
『サンクチュアリ』連載中、武論尊氏は「何か妙な切羽詰まった感覚」に襲われ、「休ましてください」とすべてを中断。理由は定かでないが、牧場に行けば元気になれる気がして北海道へ向かったという。
牧場では実際の馬をよく見るようになったが、静内町(現・新ひだか町)の場外馬券売り場に土日は入り浸っていた。その生活は、競馬に人生をかける男たちを描いた漫画『パッパカパー』の世界そのものだったと振り返っている。



