『ミッドウェイ海戦』書評 組織の失敗構造を描く一冊
『ミッドウェイ海戦』書評 組織の失敗構造を描く一冊

大木毅著『ミッドウェイ海戦』(文春新書・1210円)は、日本が主力空母4隻を失い、太平洋戦争の転換点となった海戦を中心に、日本海軍の意思決定を語る書である。新奇な説を打ち出すのではなく、史実のオーソドックスな説明に徹している。内容は、『「太平洋の巨鷲」山本五十六』などの著者の既刊と重なる部分もある。

失敗に至る道筋を解明

本書の独自性は、ミッドウェイ海戦を日本海軍の失敗の一つとして位置づけ、そこに至るまでの道筋を解き明かす点にある。ページの半分以上を割いて描かれるのは、ミッドウェイ海戦以前、真珠湾攻撃から珊瑚海海戦に至る日本の戦いである。

そこから浮かび上がるのは、方針を統一できず、教訓から学ぶことができなかった海軍の実像だ。過去の作戦で生じた問題は深く検証されることなく、同じ過ちが次の戦場でも繰り返される。上層部は戦略方針を統一できず、一貫性のない人事異動が最適な人員配置を妨げた。

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勝機を潰した組織の姿

後半では、そうして臨んだミッドウェイ海戦を語る。敵情判断の油断、兵装転換の遅れなど、さまざまな失敗から見えてくるのは、準備不足と思考停止が重なり、勝てる機会を自らの手で潰した組織の姿である。

さらにその後の章では、海戦直後の大本営発表が事実と異なる戦果を報じたことや、戦後の元海軍軍人による著書で「わずかの差で勝利を逃した」という体裁を取り繕うストーリーが流布されたことに言及する。脚色された伝説は、戦後長らく海軍関係者自身の手で語り継がれた。

現代の組織にも通じる教訓

都合の悪い事実を検証せず、体裁のよい物語に置き換えてしまう構図は、現在の組織にも潜み、失敗や不祥事の原因につながっているのではないか。本書は、海軍の姿を通して組織のあり方を考えさせる一冊である。

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