矢島沙夜子の「小楽園」が生み出す異世界
アートディレクターの矢島沙夜子さんが手がける店舗や商品が、その唯一無二の世界観で国内外のファンを魅了している。2023年に東京・代々木上原にオープンした「小楽園 ティーサロン&ブティック」は、矢島さんの世界観を存分に堪能できる空間だ。
「竜宮城やユートピアなどの入り口になるようなものを作りたい」と語る矢島さん。店のコンセプトは「桃源郷の土産物屋」。ピンク色の外観、山水画のような筆致で山が描かれた壁、鮮やかな色のタイル、アジア風の人形などの装飾品、そして1920年代の欧州のウェートレスをイメージしたスタッフの制服。異国趣味が巧みにミックスされ、独特な魅力を放っている。
広告からドールハウスまで、幅広い活動
矢島さんは広告やファッション誌面のプロデュース、映像、商品、店舗デザインなど幅広く活動。今年2月には商業施設「ルミネ」「ニュウマン」の広告を担当し、俳優の橋本愛さんがカラフルな花や人形に囲まれてピクニックを楽しむファンタジーあふれる作品を手がけた。また、2020年から始めたドールハウスのコレクションは、家具の細部にまで毒気のあるかわいらしさが詰まっており、ケイタマルヤマとの協業も実現している。
「子どもの頃から民話や物語が好き。空想を広げて物語をどんどん掘り下げ、デザインに詰め込んでいく。気付けばてんこ盛りで、引き算ができない」と矢島さんは笑う。
「食」を通じた表現と山菓子
近年、矢島さんが力を入れているのが「食」を通じた表現だ。「味わえば、それが通行手形となり、物語の世界にぐっと入り込める」と語る。「小楽園」で販売するチョコレート菓子「山菓子」は、「神々が日本列島を見下ろして、『あの山かわいいね』と無邪気に語り合って山のお菓子を作っているのを想像して生まれた」という。富士山や高尾山など実在の山を、地形データを基に手のひらサイズで精細に再現。パッケージの着想源は、明治時代に輸出用に作られた日本のお茶のラベルだという。
今年3月には東京・銀座の「ギンザシックス」にも出店。架空の駅の売店をイメージした空間が話題を呼んでいる。
国内外のファンが集う観光名所
カフェも備える「小楽園」は、まるで観光名所のよう。矢島さんの提案する世界に魅了された国内外のファンが、チャイナ風やロリータ風など思い思いに着飾って訪れる場所となっている。鮮やかで濃い色遣い、異国情緒あふれる空間、物語性を感じる作風は、多くの人々を魅了し続けている。



