「生成AI」という言葉が一般化し、オリコン“本”ランキングでも多くの関連本がランクインしている。かつてSFの世界で語られていた人工知能は、いつから日常に入り込み、関連書籍が多く発売されるようになったのか。「オリコンBizトーク」第6回では、ランキングデータから見えたAIテーマの変遷とおすすめ書籍を紹介した。
AIテーマの原点はSF小説に
AIを想起させるテーマの本の歴史は古く、原点はSF小説に見られる。ジョージ・オーウェルが1949年に発表した『1984』(訳:田内志文/KADOKAWA)では、“ビッグブラザー”による監視社会の恐怖が描かれ、その後のAIや管理社会の概念に大きな影響を与えた。また、レイ・カーツワイルの『シンギュラリティは近い』(NHK出版)では、人工知能が人間の知能を超える技術的特異点(シンギュラリティ)が提示されたが、当時は遠い未来の話として受け止められていた。
ランキングにAI関連本が目立ち始めたのは2017年以降
ランキングにAI関連本が目立ってランクインし始めたのは2017年以降だ。先駆けとなったのは、2015年出版の松尾豊『人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの』(KADOKAWA)で、AIに仕事を奪われる危機感と期待が入り交じる中で関心を集めた。それでも読者にとってAIはまだ専門家のものであり、自分ごととは捉えられていなかった。
転換点は22年末の「ChatGPT」登場だ。対話型の生成AIは直感的に誰でも利用でき、社会へ急速に浸透。翌23年4月以降、関連書籍の出版が急増し、当初3ヶ月で14冊程度だったペースが、23年7月には15冊、8月には21冊に増えた。23年5月15日付の週間ランキングでは『先読み!IT×ビジネス講座 ChatGPT 対話型AIが生み出す未来』(古川渉一、酒井麻里子/インプレス)が22位に入り、ビジネス層以外にも広く読まれる時代となった。
目的別に選ぶおすすめ書籍
これだけ多くのAI関連本がある中で、どの本を読むべきか。目的別のおすすめ書籍を紹介する。全体像を知りたい人には、松尾の前掲書と今井翔太『生成AIで世界はこう変わる』(SBクリエイティブ)の2冊を合わせて読むのがおすすめだ。松尾の本でAI研究の歴史やディープラーニングの基礎を学び、今井の本でChatGPT以降の生成AIが社会をどう変えるかを理解できる。2冊を通読すれば、AIの仕組みと進化の輪郭が明確になる。
仕事で具体的に活用したい人には、『AIを使って考えるための全技術 「最高の発想」を一瞬で生み出す56の技法』(著:石井力重/監:加藤昌治/ダイヤモンド社)や『最短で最大の成果を上げる AIアウトプットの全技法』(上岡正明/アスコム)といったハウツー本が役立つ。プロンプトの書き方からメール作成、アイデア出しまで実践的なテクニックが網羅されており、パソコンの横に常備して作業中にページをめくる使い方が適している。
AIが普及した社会の未来を深く考えたい人には、新井紀子『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)がおすすめだ。新井は人工知能が東京大学の入試を突破できるかを検証するプロジェクトを主導した人物で、同書ではAIが確率と統計に基づいて処理しており内容を理解しているわけではないと指摘。人間がAIに勝る部分として“読解力”の重要性を説くが、現代の子どもたちの調査結果から読解力が危機的な状況にある事実を突きつけている。
親子で楽しく学びたい人には、科学漫画サバイバルシリーズの『AIのサバイバル 1』『AIのサバイバル 2』(文:ゴムドリco./絵:韓賢東/ともに朝日新聞出版)が人気だ。子どもにも理解しやすい漫画形式で基礎知識を学べるため、家族での対話のきっかけ作りにも適している。
このようにAI関連本は技術の進化とともに様変わりし、現在では読者のあらゆるニーズに応える多様な書籍が出版されている。今後のAIのさらなる進展によって、新たな切り口の本が出版されるかもしれない。



