退職代行サービスが普及する一方で、依然として深刻なブラック企業問題。そんな中、退職代行ならぬ『壊職代行』というマンガが注目を集めている。作者のもちづきひいろ氏は、本作を通じて「理不尽を壊す勇気を与えたい」と語る。
『壊職代行』とは? パワハラ上司への痛快な復讐劇
『壊職代行』(シーモアコミックス)は、もちづきひいろ氏・田田田田氏による青年マンガで、コミックシーモアで配信中。不動産営業会社フマホームで働く鈴木は、パワハラや労働基準法違反が日常的なブラック企業に耐えかね退職を決意する。しかし、その翌日からいじめ同然の扱いを受け、心身ともにボロボロに。絶望する鈴木の前に現れたのは、「壊職代行」を名乗る女性・静香。彼女は「ブラック企業やブラック上司、代わりに『壊』します」と宣言し、鈴木に嫌がらせをした人々を次々に“壊”していく。
読者からは「スッキリする物語です。仕事が頑張れそう」「節々に社会情勢を盛り込んでいる」「現代社会の闇を切ってもらいたい」と高い評価を得ている。
「読む清涼剤」としての作品
もちづき氏は、読者の反応について「実際にブラック企業に勤めている人が本作を読んでも、その人の環境は変わらないかもしれません。それでも、読んでいるその時間は、辛い現実から離れてスカッとした気分を味わってもらえる。そんな『読む清涼剤』、『読む晩酌』のような作品を目指しています」と語る。
退職代行をモチーフにしたきっかけは、2023年半ばに読んだ退職代行を題材とした別のマンガだった。「退職代行のサービス自体は2017年から存在していましたが、当時はまだそこまで話題になっていませんでした。『煩わしいことを代行してくれる存在』を復讐の代行業というフォーマットにできるのではないかと思いました。また、既存の復讐代行作品と差別化するため、対ブラック企業に特化しました」と説明する。
フィクションとリアルのバランス
もちづき氏は、ブラック企業を2種類に分類する。「ひとつは、洗脳や人格否定のような『悪意型ブラック』。これは会社のトップや責任者の資質など人的要因が大きい。もうひとつは、低賃金や多忙による『構造圧迫型ブラック』。こちらは元請けのシワ寄せなど、自分たちではどうにもならない要因もある。本作では、あくまで『悪意型ブラック企業』を壊していく方針です」
パワハラについては、「人間は意識しないとパワハラを起こしやすい存在。だからこそ、ルール整備や罰則、監視体制といった社会的な歯止めが必要」と指摘する。
時流とマッチした成功
配信開始は2025年2月。同年4月には「新入社員が退職代行を使って入社一週間で辞めた」といった話題がXで多く上がり、退職代行サービスの注目度が高まった。「4〜5月あたりには『壊職代行』の売上がかなり伸びました。時流とマッチしたのが大きいと思います」と振り返る。
成敗シーンでは「自分のしてきた行為が跳ね返ってくる」ことを意識。例えば、女という性を悪用する三木は男女関係の罠で地獄を見る。「本人に関連した報いを受けるところが爽快感につながっています」と語る。
また、表情や顔芸は実際に自分で表情を作り、リアルを感じられるようにしている。「完全な嘘の描写は読者が冷めてしまう。復讐内容は絵空事ですが、『どこかできそうな雰囲気がある』と言っていただけることがうれしい」
「壊職完了」の決め台詞に込めた思い
「壊職」という造語を定着させるため、作中で頻繁に使用。決め台詞は「とにかくかっこよく見せて、復讐が執行されて読者がスカッとした勢いをそのまま昇華するような締めにしたい」と意図を説明する。
最後に、ブラック企業に勤める人々へ「マネしちゃダメですよ(笑)。現実には『壊職代行』のような存在はいませんが、しんどい境遇から救ってくれる存在は絶対にいます。本作で刹那の癒しを得て、また厳しい現実に立ち向かうのも立派な選択。でも、立ち向かいたくなったとき、勇気を出して理不尽を『壊』せば、きっと救いの手があるはず。そんな勇気を感じさせる作品にできれば」とエールを送る。



