東京都内では今年、東京文化会館や世田谷パブリックシアター、帝国劇場、Bunkamuraシアターコクーンなどが改修や建て替えで休館する一方、その穴を埋めるように新劇場のオープンが相次いでいる。これらの新劇場は、立地や設備の独自性を武器に、新たな演目で観客を魅了している。
東京駅前に800席「東京建物ぴあシアター」
JR東京駅八重洲口前にオープンした「東京建物ぴあシアター」は、収容人数約800人。東京建物の三浦拓実課長は「新幹線乗り場や高速バスターミナルから近く、地方からも訪れやすい」と語る。同社のリサーチで800人規模の劇場が少ないことが判明し、この規模に設定したという。劇場内には「8」にちなんだモニュメントが複数設置され、同じ建物内のカンファレンス棟と連携したイベントも可能。近隣には2029年に梅田芸術劇場が1300人規模の新劇場を開場予定で、日比谷~有楽町~銀座エリアに次ぐ「劇場街」が形成されつつある。
高輪に「Box1000」、有明に「EXシアター有明」
JR山手線高輪ゲートウェイ駅近くの複合施設「MoN Takanawa: The Museum of Narratives」内にある「Box1000」は、1000人収容。縦9メートル、横21メートルの巨大LEDパネルが常設され、映像を活用した演出が可能。施設内には自動走行の乗り物や足湯もあり、大人のテーマパークのような雰囲気だ。
江東区有明の商業施設内にオープンした「EXシアター有明」は、客席数1500人規模。壁の凹凸が有明の海や波をイメージしており、せりふや歌詞が聞き取りやすい音響設計になっている。
オープニング公演のラインナップ
東京建物ぴあシアターのオープニングシリーズ第1作は、ホリプロとの共催による渡辺えり新作ミュージカル「シークレットステージ」(9月9~24日)。主要キャスト5人が50役以上を演じ分ける。続いてTBSとの共催で横山拓也の新作「ナイボー!」(9月30日~10月18日)、ぴあ単独主催で足立紳の青春小説原作「春よ来い、マジで来い」(10月23日~11月7日)が控える。ぴあの石田翔部長は「自社でコンテンツを作り、発信していくことが業界の起爆剤となれば。プロデューサーも育てたい」と意気込む。
Box1000では、座席を全て取り払い、大阪大学教授・石黒浩プロデュースの周遊型イベント「いのちの未来+」(7月25日~9月25日)を開催。EXシアター有明の注目作は、ミュージカル「ディア・エヴァン・ハンセン」(7月25日~8月23日)で、柿澤勇人と吉沢亮がダブルキャストで主演する。
市場規模は過去最高も、課題も
ぴあ総研によると、2025年の音楽・演劇などのライブ・エンターテインメント市場規模(確定値)は前年比12.6%増の8564億円で、3年連続過去最高を更新。動員数は7.7%増の9223万人、公演回数は6.0%増の10万820回で、2019年以来の10万回台となった。今後、市場規模は2035年に1兆1億円に拡大すると見込む。
しかし、ぴあ総研の笹井裕子所長は「市場規模拡大の大きな要因の一つはチケット代の上昇にあり、公演回数は10万回台とはいえコロナ禍前を超えておらず、今後も慎重に見ていく必要がある」と指摘。内訳としては大規模公演が牽引しており、新たな核となる人気公演を増やすことが課題だという。笹井所長は「休館中の劇場もある中で、今回の劇場開場がただちに市場規模を大きく押し上げるわけではない」と分析しつつ、「様々なサイズの劇場が用意されていることは、今後の作品やスターを育てる上で重要」と述べている。



