第67回東京高円寺阿波おどり(NPO法人東京高円寺阿波おどり振興協会など主催)が29日に開幕する。今回は来場者の増加を受け、32年ぶりに演舞場が追加される。本番に向けた準備は大詰めを迎えており、街は熱気に包まれている。
32年ぶりに演舞場を追加
24日夜、杉並区の劇場「座・高円寺」のホールで、「東京天水連」のメンバーらが鉦や太鼓の音に合わせ、振り付けや隊列の動きを入念に確認していた。同団体は今回、高円寺中央公園近くに約70メートルにわたって新設される「公園前演舞場」前に本部を構える。初日にメンバー約45人が先陣を切って同演舞場で踊りを披露する予定だ。
連長の市東妙子さん(52)は「新たな演舞場は、お客さんとの距離も近い。私たちらしいダイナミックな踊りを見せたい」と意気込む。
祭りの歴史と新演舞場の役割
高円寺阿波おどりは1957年、隣町の阿佐ヶ谷の七夕祭りに対抗しようと、一部の商店街が始めた「ばか踊り」が原点だ。第1回の踊り手は38人。観客は2000人程度だった。その後、踊り手たちが本場・徳島の阿波おどりを習い、63年に「高円寺阿波おどり」に改称。65年には約800人が参加し、約30万人を動員した。
演舞場も増設され、94年以降、8か所での実施が定着した。2013年には観客動員が100万人を突破したが、観客らの安全確保が課題となった。「公園前演舞場」は人流を分散させるため、メイン通りから少し離れた住宅街に設けられる予定で、主催する同協会の冨沢武幸事務局長は「より安全に運営していくための第一歩にしたい」と話す。
亡き家族への思いと地域の支え
東京天水連のメンバーで中学教諭の岩浪竜也さん(29)は「新しい演舞場で踊ることができるのは、何かの縁だと思う」と話す。同団体は1985年に父・則彦さんらが発足させた団体で、祖父・信也さんも一員だった。岩浪さんは物心がつく前から、2人に踊りを教わってきた。信也さんは20年以上前、本番中に倒れ、帰らぬ人となった。3年前には則彦さんも病気で他界し、「阿波おどりが大好きだった2人の分まで楽しまなければ」との思いを強くしたという。新たな演舞場は、信也さんと則彦さんが暮らした実家の目の前だ。岩浪さんは「2人にも届くような演舞をしたい」と力を込めた。
地域住民たちもイベントを支えている。自治会役員の佐山朝子さん(77)もその一人。53年前に群馬県から嫁ぎ、町会や商店街の垣根を越えて、街全体が一つになって祭りの成功に向かっていく風土に魅せられたという。これまで自治会や老人会の仲間たちと、ボランティアで会場の警備などを行ってきた。演舞場の新設が浮上した時には、ゴミや騒音への不安を訴える住民と対話し、理解を求めてきた。当日は開会式の警備をサポートした後、観客の誘導やマナー啓発にあたる予定だ。「踊り手や観客、住民の皆が気持ちよく2日間を終えられるように盛り上げていきたい」と話した。
東京高円寺阿波おどりは29、30日の午後5~8時にJR高円寺駅(杉並区)周辺で行われる。2日間で延べ158連、約1万人が9会場で踊り歩く。会場周辺は両日とも午後4時10分~8時30分に交通規制が行われ、一般車両は通れなくなる。会場周辺では飲食を楽しめる屋台が並び、公式グッズの販売も行われる。詳細は主催団体のホームページで確認できる。



