45か国・地域の選手らが熱戦を繰り広げた愛知・名古屋アジアパラ競技大会(読売新聞社協賛)が2026年10月24日、幕を閉じた。懸命に勝利を目指す選手を観客が声援で後押しし、様々な会場で障害の有無を超えた一体感が生まれた。一方、運営面ではアジア大会に続き国歌を取り違えるミスが再び起き、課題も残った。
地元・豊橋出身の八木選手が銀メダル
「大勢のお客さんの前でプレーできて最高でした」。卓球男子シングルス(立位7)で銀メダルを獲得した愛知県豊橋市出身の八木克勝選手(36)(電通デジタル)は、地元開催の今大会を振り返った。
生まれつき両肘から先が短いが、障害のない友人らと競い合って力を伸ばし、2021年東京パラリンピックに出場した。だがコロナ禍で無観客となり、悔しがった。今大会は地元の児童らも駆けつけ、歓声を力に劣勢をはね返した場面もあった。「生で見れば迫力が伝わり、また見たい、やってみたいという人も増える。障害者への理解にもつながる。この機運を持続させたい」。競技とともに多様性への理解を広める活動への意欲も新たにした。
高桑早生選手がアジア記録で金、有終の美
5大会連続出場した陸上女子の高桑早生選手(34)(NTT東日本)は今大会で引退する。出場した100メートル(義足T64)はアジア記録で金メダルを獲得、有終の美を飾った。
中学1年の時に骨肉腫で左脚を切断し、高校で競技を始めた。「すごくいい形で締めくくれた」と笑顔で語った。
車いすで閉会式の会場を訪れた愛知県常滑市の女性(85)は期間中、車いすバスケットボールを観戦したといい、「テレビで見るのとは全く違うスピード感と迫力で、元気づけられた」と語った。
国歌取り違え、19日に3回
45か国・地域の選手らが熱戦を繰り広げた一方で、運営面ではアジア大会に続き国歌を取り違えるミスが再び起き、課題も残った。
ミスは19日に3回あった。パラテコンドー男子の表彰式で、優勝した台湾選手にイラン国歌が流れ、2日後に式をやり直した。テコンドー女子の表彰式と、座位バレーボール女子でも起きた。
両大会とも会場運営はフランスのイベント会社「GLイベンツ」の日本法人が担当した。組織委員会はパラ大会前、再発防止を求めたが教訓は生かされず、組織委の幹部は「国歌の間違いは言語道断だ」と悔やんだ。
バリアフリー化進む、選手村施設は熊本で再利用へ
パラ大会に向けては会場や街のバリアフリー化が進んだ。両大会を通じて既存施設の活用を基本とした組織委が、選手村の代わりに使用したコンテナ型の宿泊施設は、熊本地震の被災地で応急仮設住宅として再利用されることになった。12月の供用開始を目指すという。
新たな挑戦も含めて今大会が残したものは何か。今後、国内で開催される国際大会で同じ失敗をせず、良い面が引き継がれるように、組織委は運営面の課題をしっかり検証してほしい。(中部支社 松岡樹)