青森ねぶた祭で、ひときわ力強い音を響かせる囃子方「青森ねぶた凱立会」。祭りで最も優れた演奏をした団体に贈られる「囃子賞」を9回連続で受賞しており、10回連続の受賞に挑む。手ぶりがね奏者の木村富美恵さん(57)は今回を最後に会からの引退を決め、集大成の運行に臨んでいる。
約100人の奏者が一体となって
7月中旬の夜、青森市内の海沿いの空き地で、仕事や学校帰りの奏者約100人が整列し、笛、手ぶりがね、太鼓で一つの響きを奏でていた。手ぶりがね部長として約30人の奏者をまとめる木村さんは全体練習後、若手の演奏の動画を撮り、自ら手ぶりがねを打って指導していた。
手ぶりがねが担うのは、囃子全体のテンポを刻むメトロノームの役割だ。人それぞれ音の鳴り方は違い、「その人の音は3年目で見つかる」と木村さん。1人ずつ演奏を聞き分け、「誰かに合わせるのではなく、正しいテンポを身につけて」と指導し、手の高さや姿勢にも気を配って一体感を追求する。
凱立会は「家族」
木村さんは凱立会が2004年に結成された時からのメンバーだ。20代の頃は跳人として祭りに参加していたが、知人の誘いで20代後半で凱立会の前身団体で手ぶりがねを始めた。30年近い付き合いのメンバーもおり、「凱立会は家族です」と木村さんはいう。
指導に熱が入りすぎて反発を招き、後輩が会を去ったこともあった。自責の念とともに、一人ひとりに合った伝え方があると学んだ。「後輩に育てられたのは自分だった」と振り返る。
2年前に引退を決意
2年ほど前、10回連続の受賞を区切りに引退しようと決意した。体力の限界に加え、家族で県外へ転居すると決まったからだ。
昨年の祭りが終わってからは副部長に指導役を委ね、自らは見守る立場に回った。「前は『木村さんがいなくなったらどうしよう』と言われてきたけれど、言われなくなった。みんななら大丈夫だから、最後は泣かないでいようと決めている」と語る目には既に涙が光っていた。
今年のねぶたは源義経と静御前
凱立会は「日立連合ねぶた委員会」の運行で演奏する。今年のねぶたの題材は、源義経と静御前が吉野山で別れを迎える場面。ねぶた囃子を構成する七つの節に強弱をつけ、運行を盛り上げる。
囃子賞を含めた審査結果は、5日夜に発表される。大角地直樹会長(54)は「10連覇を達成し、最高の花道を飾ってあげたい」と語る。功労者への感謝を乗せた音色とともに、ねぶたが街を行く。



