timeleszのメンバー篠塚大輝が映画初出演を果たした作品『焼却炉』が、第60回カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭(KVIFF)のプロキシマ部門で審査員特別賞を受賞した。同映画祭は1946年に始まり、毎年約200作品のワールドプレミアを開催する国際映画製作者連盟公認の映画祭で、今回の受賞は日本映画の新たな可能性を示すものとして注目される。
江國香織の原作を25年の時を経て映画化
本作は、作家・江國香織の短編集『すいかの匂い』に収録された一篇を映画化。学校や家族、周囲になじめない9歳の少女・宮田梢が、影絵サークルの大学生・すずきじんたとの出会いを通じて初恋にも似た感情を抱く、少女から大人への過渡期の繊細な心を描く。プロデューサーの長尾卓磨は、約25年前の学生時代に原作を読み、以来映像化を夢見てきたという。その長年の思いが江國に届き、今回の映画化が実現した。
主演はオーディションで勝ち取った10歳の新人かりん
主人公の宮田梢を演じるのは、本作で俳優デビューとなるかりん。オーディションで主演を勝ち取り、撮影当時10歳だった彼女が等身大で梢を演じる。一方、梢を惹きつける大学生・すずきじんたを篠塚大輝が演じ、こちらも映画初出演となる。内田俊太郎監督がメガホンをとり、キャスト・スタッフの熱意が結集した作品だ。
プロキシマ部門でグランプリに次ぐ主要賞を受賞
『焼却炉』は、新しい作家や挑戦的な作品が出品されるプロキシマ・コンペティション部門に出品。審査員特別賞は同部門でグランプリに次ぐ主要賞で、革新的な表現や将来性のある作品を高く評価した審査員が選ぶ。審査員は本作について、「一見すると非常にシンプルな作品だが、その控えめな語り口と軽やかさの奥には、豊かな詩情と深い洞察が幾重にも積み重なっている。監督は、ほとんど言葉を発しない一人の風変わりな少女の視点を見事に取り入れた。彼女は多くを語らない一方で、あらゆることを敏感に感じ取っている。まるで地震計(リヒタースケール)のように、彼女の表情は、周囲の人々の言葉にならない緊張や心の揺らぎを映し出している」と高く評価した。
内田監督「この賞は関わった皆様とともにいただいたもの」
授賞式には内田俊太郎監督、長尾卓磨プロデューサー、高田聡プロデューサーが登壇。内田監督は「このような賞をいただけて、本当に光栄に思います。まず、この作品を選んでくださった審査員の皆様、作品を迎えてくださった映画祭の皆様に、心より御礼申し上げます。そして『焼却炉』という物語を託してくださった原作者の江國香織さんに、心から感謝いたします。また、本作に携わってくださった素晴らしいキャスト・スタッフの皆様にも、心から感謝いたします。この賞は、本作に関わってくださった皆様とともにいただいたものだと思っています。改めまして、このたびはありがとうございました」と感謝の意を述べた。
世界的映画祭の一角、カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭
カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭は、カンヌやベルリンなどで評価の高かった作品の上映も行う、世界の映画祭を賑わせた作品が一堂に会する場。昨年は第78回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された早川千絵監督の『ルノワール』も上映されている。今回の受賞により、『焼却炉』は国際的な注目を集めることとなり、2027年の公開が待たれる。



