SUPER EIGHT安田章大、高雄映画祭で「普通」への思いを熱弁「世の中がさいなまれすぎている」
安田章大、高雄映画祭で「普通」への思いを熱弁

SUPER EIGHTの安田章大と小林聖太郎監督が9日、台湾で開催中の高雄映画祭に出席し、映画『平行と垂直』(公開中)の舞台あいさつを行った。安田は、自閉スペクトラム症の兄を演じた本作に込めた「普通」への思いを、幼少期から抱いてきた考えとともに語った。

ワールドプレミア上映後の舞台あいさつ

この日、本作は同映画祭でワールドプレミア上映された。上映後には、熊本でのチャリティーイベントと日程が重なり登壇できなかったのんからビデオメッセージが寄せられ、熊本への高雄からの支援に感謝を伝えるとともに「この作品が高雄の皆さんに届くのがとても幸せです」と喜びを述べた。

続いて司会が客席にいた安田と小林監督を紹介すると、場内は大きな歓声と拍手に包まれた。安田は「高雄に来ることができて本当に幸せです。日本から一生懸命作った作品がみなさんと一緒に感動を分かち合えたということが幸せです。のんちゃんにも感謝しています。のんちゃんがいたから、ぼくは大貴として演技ができたので、のんちゃんがいなければこの兄妹も存在しなかったなと思うと、のんちゃんと一緒にできたから大貴があんなふうに育ちました。こんなに幸せな景色があると思いませんでした。ありがとうございます」と喜びを語った。

小林監督は「映画って、同じものが毎回映されているはずなんですけど、お客さんの反応があって初めて完成すると思っていて、今日の反応は一番すごくて感動しました。ありがとうございます」と感謝を述べた。

企画の始動と脚本への思い

本作は、安田が劇団ふくふくやを主宰する山野海のオリジナル脚本に感銘を受け、持ち込んだことから企画が始動。自閉スペクトラム症の兄・大貴(安田)と、幼い頃から兄を支えてきた妹・希(のん)が、希の結婚話をきっかけに互いのこれからとこれまでに向き合うヒューマンドラマだ。

安田は企画に惹かれた理由について「もちろん1稿から読みました。この原案を作ってくれた山野海という人間がいてくれたから、まずは0から1に立ち上がることができましたね。山野海のまわりにはたまたまASDの方がいてたんです。その方のことを絶対作品にしたいと山野海がまず話を僕にしてくれた時に、必ずそれをしようよというところからスタートをし、出会ったその日のうちに電話番号を交換し、次の日にホン書いてくれと言い、1、2ヶ月後に第1稿が仕上がりました。その第1稿を経てもう2稿目からはみなさんで作り上げていきました」と振り返った。

小林監督は、約2年かけて20稿ほど重ねたことを説明。「原作モノが多い中で、原案通りというよりは一緒に作ったという感覚です。(自身の)ほかの作品も絡めていうと、人間と人間がもめたりぶつかっていることが多い気がします、自分では。あと、笑いというものがどうしても欲しくなっちゃうのが、漫画と捉えられるのかもしれません。悲惨なことがあればあるほど、笑いが欲しくなります」と作品づくりへの思いを語った。

「普通」への疑問と作品に込めたメッセージ

安田は「日本だろうが高雄だろうが、世界各国どこでも一緒で、普通という言葉に世の中がさいなまれすぎているのではないかと、誰かにとっての普通が自分にとっての普通ではない、きっと誰かにとっては異常でも自分にとっては異常ではない、そういう風にそれぞれの考え方や価値観がある、それでいいと思う。だけれどそれをとがめる世の中になっていることがすごく嫌だった。そしたらどうすればいいのか。人のことをゆっくり待てばいいと思うし、考えていることをしっかり聞けばいいと思うし、まずは、自分から動き出さなきゃ何も変わらないんじゃないか、と思い、それは幼少期から思っていました」と心の内を明かした。

さらに「ASDというものと発達障害、定型発達、確かに病名はありますし、いろんな分けられ方をします。反応速度、考え方、伝え方、受け取り方、絶対違いますけど、それも僕たちがちゃんと真っ向から向き合う必要があるのは病気でもなくただの人、その人の特性、そこに目を向けなきゃいけないなと思ったんです」と語った。

忘れてほしくないこととして「どこに居ても一人じゃないということ」を挙げ、「今はSNSがすごく発達していて、攻撃する人もいるし傷ついて立ち上がれない人もいますけど、それでも誰かたった一人でも守ってくれる人がいる、もしそこにいなければもう一人の自分です。内側という自分なんでそこで対峙すること、そこで味方を見つければいいと思っていて、だからこの作品を日本だけでなく世界に向かって届けたい。今回世界に届けることができています。ここ高雄に来れています。なのでそこをすごく感謝しているからいっぱい涙が出たんやと思います。そういう理由で作りました」と作品に込めた思いを熱弁した。

キャスティングと撮影秘話

キャスティングの経緯について小林監督は、のんについて「もともと彼女がすごくビッグネームになる前から僕は注目していて、ぜひ仕事したいなと思って一度声をかけたことがあったりしてうまくいかなくてということが1つベースにあって、今回大阪という日本の西の方にある街の話なんですけど、ぼくは大阪出身でプロデューサーの佐藤さんも大阪で安田くんは兵庫、まぁ大阪京都兵庫は台東と高雄にどういう違いがあるか僕は詳しくないんですけど、台北とは違うぞみたいな感じが3県にもあって、東京の有名な人をキャスティングして大阪弁練習してくださいっていうのじゃないほうがいいなと思ったのが1つと、3つ目はのんさんに注目していたけど、のんさんはエキセントリックというか特殊な役をよく演じている印象、性別を超えてとか漫画のキャラクターとかの印象があって、そうじゃない普通の職業、普通の役を見てみたいなぁという欲望がありました。それでお願いしました」と理由を明かした。

安田とのんの掛け合いについて、安田は「練習はしてません!現場で会って呼吸をするように、相手の呼吸を感じて、こっちの呼吸も相手が感じてくれて、そしたらできました。たぶん過去があるから今があって、今があるからきっと未来がある、そういう風に2人で過ごしてきたんやろうなと想像して寄り添ってきた感じですね」と撮影秘話を語った。

客席から役作りについて質問が飛ぶと「僕がとても動物的な人間でして、感覚で生きているので、映画に入った時に徐々に体の中に大貴が入ってインストールされていくんです。すると顔が勝手に変わったりとか、身動きが変わってきたりとか、発言することも変わってきたりとかして、いつの間にかアイドルという職業から変わっていったことが多くて、というのが一番答えな気がします。だから安田はヒト科という動物です」と笑いを誘い、終始笑いに包まれた温かい舞台あいさつとなった。