映画『Michael/マイケル』(原題:Michael)が日本で公開後、早くも興行収入50億円を超える大ヒットを記録している。本作は、音楽界のスーパースター、マイケル・ジャクソンの半生を描いた伝記映画で、世界中で記録的な興行成績を上げている。
ヒットの理由:普遍的な家族の物語
本作の成功要因として、単なる音楽映画にとどまらないドラマ性が挙げられる。描かれるのは、差別や不平等と戦う黒人青年のサクセスストーリーであり、家族との衝突や葛藤を経て、自分の人生を掴み取ろうともがく一人の孤独な若者の人間ドラマだ。これは世界共通の普遍的な家族の物語であり、日本人が好むテーマでもある。音楽以外にも、普遍性や共感性など日本の観客を引きつける要素が豊富に盛り込まれている。
『ボヘミアン・ラプソディ』超えの可能性
クイーンの伝記映画『ボヘミアン・ラプソディ』は日本で興行収入約130億円を記録し、社会的現象となった。『Michael/マイケル』が同様のヒットとなるかが注目されるが、課題もある。本作では、マイケル・ジャクソンの人生の象徴的な出来事——繰り返された整形手術、重症を負ったCM撮影中の大事故、音楽界の黒人差別との闘いなど——が表面的に触れられるにとどまり、深く掘り下げられていない。ネバーランドについても言葉が出てくる程度で、形だけの印象だ。各エピソードの細部を気にし始めると、消化不良感が残る。
若い世代への訴求が鍵
本作は、マイケルの音楽を楽しむ映画としての側面が強い。リアル世代にとっては心の琴線に触れ、魂を揺さぶられる名作となるだろう。一方、マイケルを知らない若い世代にとっては、一人の黒人青年の成長を描く人間ドラマ、普遍的な家族の物語として映る。本作をマイケル・ジャクソンの物語として認識するかどうかで、映画の価値は大きく変わる。若い世代への訴求には何かのきっかけがなければ限界があるかもしれない。
筆者が鑑賞した公開4週目の週末のシネコンでは、観客のほとんどが年配層だった。若い世代が動かなければ『ボヘミアン・ラプソディ』のような社会的ヒットにはならない。ここからさらに興行収入を伸ばすのか、失速するのか。夏休み本番を迎えるこれからが正念場となる。



