映画監督の今井ミカ氏と深田晃司氏が共同で企画・脚本・監督を手がける短編映画『水に燃えたつ』の製作が決定した。日本手話と日本語という二つの言語を用い、ろう者監督と聴者監督が協働する作品となる。
作品概要とストーリー
本作は、聴者の夫婦とろう者のカップル、それぞれの恋愛関係が複雑に絡み合い、日本手話と日本語が飛び交う修羅場へと発展していく物語。ろう者、聴者、難聴者の俳優たちが対等に出演する映画製作プロジェクトで、将来的には第2弾となる短編や劇場用長編映画の製作も見据えている。
共同監督を務める今井氏は、日本手話を第一言語とし、『虹色の朝が来るまで』『ジンジャーミルク』『黄色い子』などを手がけてきた。一方、日本語を第一言語とする深田氏は、『LOVE LIFE』『恋愛裁判』などで知られる。異なる言語や文化、経験を持つ二人が、共同で作品を作り上げる。
キャスト公募とスケジュール
製作決定にあわせ、出演者オーディションの開催も発表された。募集対象は20代から50代までの男女で、本作に登場する全キャストを公募する。応募は特設サイトで8月31日午後11時59分まで受け付ける。
撮影は今秋を予定。2027年の完成と、映画祭などでの上映を目指す。
監督たちの思い
今井監督は「日本手話には文字がなく、『危機言語』とも言われている」とした上で、「手話で生きる人々の身体や視線、行動、時間の流れ、そこに生きる人の存在そのものを、映画というかたちで未来に残したいと思い、映画を作り続けている」と説明する。
自身が言語的少数者であり、LGBTQ+のアイデンティティーを持つことにも触れ、「マジョリティから見た世界とは異なる、さまざまな視点から生まれる、言葉にできないものを映画にしていく。それが、私にとって映画を撮るということである」と語っている。
深田監督との共同制作については、「単純に『聴者とろう者』という二つの立場を撮るのではなく、カメラの後ろにいる、異なる世界を生きてきた二人が、ともに映画をつくる。その過程そのものを作品に刻み込み、新しい映画の可能性を切り拓きたい」と意欲を示している。
一方の深田監督は、2022年の映画『LOVE LIFE』に、日本ろう者劇団で活動していた俳優・砂田アトム氏が出演した経験を振り返り、「もっとろう者と聴者が対等に関わり合いながら映画が作れないだろうか、そう考えるようになりました」と本企画の背景を説明した。
その後、今井監督の作品に触れたことで、「今井ミカさんと共同で、ろう者と聴者が入り乱れるような映画を作ってみたい」と考えるようになったという。「この小さな一歩が、私たちにとっても観客にとっても、何か新しい表現に触れられる時間になればと願っています」と期待を寄せた。



