18日公開の映画「さとこはいつも」(沖田修一監督)で、有村架純(33)、石田ひかり(54)と並んで主演を務める姫野花春(かしゅん、16)。実は約300人からオーディションで選ばれた新人だ。淡い初恋に揺れる中学3年生をユーモラスに、そして鮮烈に演じ、まさかこれが初めての演技だとは、誰も思わないだろう。
3人の「さとこ」が紡ぐ物語
姫野が演じるのは、鼻炎を抱え、同じ耳鼻科に通う同級生に恋する中井聡子。もう1人は、映画配給会社で働き、6年越しの不倫が倦怠期を迎えた35歳の西田沙都子(有村)。そして、子育てを終え、かつて抱いた作家の夢を思い出す55歳の飯島里子(石田)。年齢も境遇も異なる3人が、自分の人生を小説としてつづり始めることで、それぞれの物語が少しずつ交差していく。心温まる人間ドラマだ。
台本にない場面を自らつづる
聡子は国語教師(吉田羊)に勧められ、物語を書き始める。「塩辛へ。冷蔵庫に入っている、あなたに会えるのが待ち遠しいわ」。ノートに向かう顔を、カメラが追う。推敲し、消しゴムをかけ、ふっと笑う。実はこの場面、台本には「書いている聡子」とあるだけ。沖田監督の「好きに書いて」という指示に、姫野は「違うな」とつぶやきながら、思いつくまま自らつづった。その笑いは芝居ではなく、素だったという。
「聡子と自分の距離が近かった」
「聡子だったらどうするか」を考えて演じたのが半分。残りは「聡子と自分の距離が近かったので、勝手に体が動くこともたくさんありました」。それが芝居としてよいのか悪いのか分からず、1つずつ監督と話し合い、聡子を丁寧に作り上げた。「監督は休み時間にも話しかけてくださって、すごく楽しかったです」と振り返る。
東京生まれの京都育ち。歌を習ううちに「歌だけじゃないんだよな」と芝居に心が動いた。母の勧めで事務所のオーディションを受けて合格。本格的な演技レッスンを受けないまま、この撮影現場に立った。演じるうえで、その人物が重心をどこに置いて歩くかを考える。聡子の場合は前に置いた。「父親の影響もあり、おじさんっぽい歩き方をする」と分析した。
「聡子を通して、自分のことが少しだけ好きになれた気がする」。隣に座る人にも、街で出会う人にも、それぞれ知らない物語がある。自分にも。そう思えたことが、うれしかった。長く芝居を続けたい、と願う。「おばあちゃんになっても、映画作りに関わっていたい」。いつか「こんな役者になったね」と、自分の歩みを笑って思い返せる日を楽しみにしている。(石井健)



