イタリアのラグジュアリーブランド〈ブルネロ クチネリ〉の創業者・会長ブルネロ・クチネリの人生と思想に迫るドキュメンタリー『ブルネロ 静かなる先見者』(2026年11月6日公開、配給:ロングライド)のポスタービジュアル、予告編、場面写真が公開された。
アカデミー賞受賞監督が描く「人間の尊厳」の物語
監督は『ニュー・シネマ・パラダイス』(1988)で知られるアカデミー賞受賞監督ジュゼッペ・トルナトーレ。農村で育った少年が、父が工場で尊厳を踏みにじられるような扱いを受ける姿を見た経験から「人間の尊厳ある働き方」を求め、1978年に小さなニット工房を創業した。伝統的にニュートラルな色合いが主流だったカシミヤに鮮やかな色彩を取り入れる革新的なアプローチを導入し、〈ブルネロ クチネリ〉は世界有数のラグジュアリーブランドへと成長。成功後は拡大ではなく、人間の尊厳と美を祝福する道を選んだ。
中世の村ソロメオ再生とトルナトーレ監督の手法
その結実が中世の村ソロメオの再生だ。荒れ果てた建物を丁寧に修復し、劇場や図書館建設、葡萄畑やオリーブ畑を含む公園を造園。文化とクラフツマンシップ、自然、働く人々の営みが調和する村へと育て上げ、文化・環境・経済再生のモデルとして国際的に注目されている。
トルナトーレ監督は本作を「ドキュメンタリーでも劇映画でもコマーシャルでもない、三つが溶け合う自由な試み」と語る。音楽は『ライフ・イズ・ビューティフル』(1997)でアカデミー賞を受賞したニコラ・ピオヴァーニが担当。証言者には家族、職人、経営陣、文化人、国際的著名人が名を連ね、オプラ・ウィンフリー、パトリック・デンプシー、リード・ホフマンらが登場する。物語の終盤でクチネリ自身が語る「夢は、勇気をもって育てるとき、人の運命を導く真の力となる」という言葉が作品全体を貫くテーマとして響く。
公開されたポスターと予告編
ポスタービジュアルは、電気もない農村で育った幼いブルネロが星空の下で「美しく、まっすぐに生きたい」と静かに誓いを立てる姿を切り取り、「何も持たなかった男が、未来を仕立てた。」というコピーが添えられている。予告編は、夜の葡萄畑で霜を防ぐために灯された小さな炎のあいだをブルネロ・クチネリがゆっくりと歩むシーンから始まり、証言、アーカイブ映像、再現ドラマが重なり合いながら、少年期の思索からソロメオ再生に至る哲学の形成過程を描く。ナレーションは、本人と交流のある俳優・渡辺謙が担当する。
現代社会において、クチネリが実践してきた「人間主義的資本主義」と「人間の尊厳を守る働き方」は、企業が社会に果たし得る役割について新たな視点を提示。本作は単なるファッションドキュメンタリーにとどまらず、より人間性を大切にする働き方や生き方について観客に思索を促す作品となっている。



