人形浄瑠璃文楽の若手人形遣いらが自主公演で主遣いに挑戦、先輩の支えを受けながら下積みが報われる充実感
文楽若手人形遣いが自主公演で主遣いに挑戦、下積みが報われる充実感

若手の人形遣いたちが中心となって開く自主公演「若手人形遣いを観る会」が、大阪市中央区の「Book Cafe 上方演芸 ステージ空」で開かれた。人形浄瑠璃文楽で3人がかりで操る人形の首と右手を動かす「主遣い」は、本来ならベテランが担う役どころ。公演では若手が主遣いを務め、先輩の技芸員が脇を固めた。人数が少ない若い世代は、この経験を学びとやりがいにつながると受け止め、「この経験を生かしたい」と前を向く。

「もっと上を目指し、修業を積み重ねたい」。公演で「義経千本桜 道行初音旅」の狐忠信役を主遣いとして勤めた吉田玉路は、充実感をにじませた。玉路は2009年に国立劇場養成所の文楽研修生となり、2011年に吉田玉女(現・玉男)に入門して15年になる。国立文楽劇場の本公演では黒衣を着て頭巾で顔を隠し、人形の足を担当する「足遣い」や左手の「左遣い」を務めることがあるが、この日は主役級の役の主遣いとして顔を出し、狐忠信の人形を生き生きと操った。足遣いと左遣いは先輩の吉田玉佳らが担い、太夫の豊竹靖太夫、三味線の鶴沢清公も後輩の舞台を支えた。

「足遣い10年、左遣い15年」の下積み

人形遣いは「足遣い10年、左遣い15年」と言われる長い下積み期間を経て、主遣いを担うようになる。だが文楽協会に所属する人形遣いは、42人だった2016年から現在は38人に減少。芸歴10年以下はわずか4人で、近年は新たな入門者が少ない。

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芸歴10年を超えても足遣いを続けざるを得ない状況では、ステップアップの機会に恵まれない若手がモチベーション(意欲)を維持するのは簡単ではない。しかも、足遣いは中腰のような低い姿勢を取る必要があるため、腰を痛めてしまうケースもあるという。

太夫の発案で始まった自主公演

自主公演は、靖太夫が若手の「経験を積みたい」という向上心や置かれた事情に触れ、発案した。「若い人たちは、なかなか通常の公演で脚光を浴びる役は勤められない。いい機会になれば」という思いからだ。2024年6月に第1回を開き、今年2月の玉路の会は第3回。公演には多くの文楽ファンが訪れた。

公演では、若手が観客の質問に答えたり、趣味や特技を紹介したりと、人となりを知ってもらう企画を盛り込むこともあり、大きなやりがいを得ている。

玉路は公演後、「人形遣いは40年、50年という長い時間をかけて成長していくもので、まだまだ未熟。拙かったとは思うが、観客に喜んでいただき、積み重ねはこうして報われるんだと知った」と笑顔を見せた。

次回は9月5日、新たな主遣いが登場

次回の自主公演は9月5日に予定され、桐竹勘昇と豊松清之助が主遣いを勤める。清之助は「圧倒的に経験値が少ない自分だが、こんな機会があるなら飛びつこうと思った。この会を機に、先輩方に稽古をつけてくださいとも言いやすくなり、より多くを学べると思う」と話す。

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