歌舞伎俳優の尾上松緑(51)が、10月2日に東京・歌舞伎座で開幕する「錦秋十月大歌舞伎」で、祖父の二代目松緑、父の初代尾上辰之助も当たり役とした「義経千本桜 渡海屋・大物浦」の悲劇の武将・平知盛を演じる。
14年ぶりの大役への思い
松緑は「志半ばで死んでゆく主人公を描く、悲劇性の強い物語。こうした切ない物語はとても好きで、前回舞台から10年以上の時を経てさまざまな大役を勉強し、今が時期的に一番適していると思います」と語る。知盛は歌舞伎の時代物を代表する大役で、物語前半は都を落ち延びる源義経一行が滞在する廻船問屋の主人として登場。やがて壇ノ浦の合戦で死んだはずの知盛の霊という正体を現し、満身創痍の死闘、巨大な碇を巻き付けての入水と、劇的な最期が再現される。
祖父と父の映像から学んだ知盛
亡き祖父と父が演じる知盛の映像を繰り返し見てきたという松緑は「(幼くして死別した)祖父と父から直接、知盛を教わることはできませんでしたが、義太夫狂言に優れた祖父は様式性を生かし、父は義太夫に乗りながら写実的な心情を表現し、異なる魅力がありました」と述べる。15年前の初演時は、病床にあった人間国宝、五代目中村富十郎に教えを受けた。「船宿の亭主、平家の武将知盛、死に物狂いの知盛-と異なる3面を明確にしつつ、同一人物として筋を通すよう教わりました。手順の差異を超え、祖父と父のいい所を再構築し、魂を継承する知盛にしたい」と語った。
公演は20日まで。「渡海屋・大物浦」は第3部(午後6時開演)で、同時上演は「屋敷娘」「近江のお兼」。第1部(午前11時開演)は「鯉つかみ」「義経千本桜 川連法眼館」、第2部(午後2時半開演)は「盛綱陣屋」「山帰強桔梗」。チケットホン松竹(0570・000・489)で問い合わせを受け付けている。