麿赤児と仏チェロ奏者クテュリエが強力タッグ、東京で「Alter Ego」上演
麿赤児と仏チェロ奏者クテュリエ、東京で共演

舞踏家の麿赤児とフランスのチェロ奏者エリックマリア・クテュリエが共演する「Alter Ego」が29日から東京で上演される。“怪人”と現代音楽演奏集団「アンサンブル・アンテルコンタンポラン」の名手は、水と油のようでいて、互いに実力を認め合っている。

「張り切ってますよ」と麿

「彼は面白いですぞ。でっかい体して、繊細でね。散歩の途中で小さい花を見つけるとすぐ写真を撮る。それにトンカツが好きらしくて」と麿は笑う。

2人の出会いは2023年のパリ。麿が踊った後、打ち上げの場に目をひく男がいた。「しばらくにらみあって、『お前、何者だ?』と聞くとニコッとしてね。日本語で『面白かった』って」

「もう一人の私」を創作

翌年のベルギーの芸術祭での共演を頼むと、快諾。バッハの無伴奏チェロ組曲などで踊る「Alter Ego」を創作した。題名は「もう一人の私」という意味だ。麿を「偉大な演出家」と呼んでいるクテュリエは、今作について「2人の人間のつながりと、そのつながりを通じて観客に提示されるものを映し出す」とコメントしている。

クテュリエは大駱駝艦の創立年と同じ1972年生まれ。麿は「駱駝の子って、言ってます」と話す。

「完全に音に誘われます」

高度な演奏技術と滑らかな音色を持ち合わせ、古典も弾きこなすクテュリエとの共演は「完全に音に誘われます」と麿。「でも誘われっぱなしも嫌だから、何回か聴いて、絵や物語が浮かぶまで待つんですよ」

悠然と待ち、やがて脳内で像を結んだイメージから「同行二人」「エデンの園」「水 光」など計10景を創作した。「最近は彼が『お前、何見えた?』なんて聞くから『宇宙が落ちてきた』なんて返すと『おお、すごい』と言う。僕の踊りを頭に入れてどう弾くか。バッハの厳然たる旋律があるから大変な努力をしてると思いますよ」

そんなクテュリエの気概を感じると、83歳の身体に自ら鞭を打たざるを得ないようだ。「イテテテテ、骨と体のきしみを音楽として聴くみたいな感じですな。オッハハハ」

旧友の死と艦員の成長

舞踏カンパニー・大駱駝艦の艦長で、白塗りにした肉体の味わいは年々増している。寂しいのは旧友たちの相次ぐ死だという。4月には「ゲージツ家のクマさん」で“裏艦長”でもあった篠原勝之が逝った。「若いやつらの相談役。喪失感は大きい。ジジイ同士で耳が遠いから『ワワワッ』としゃべる。大声を出して元気づけ合っていました」

悲しみの一方、今年は鉾久奈緒美の演出作が絶賛されるなど、艦員の成長がうれしい年でもあった。稽古場もにぎやかだ。「元気が出ますね。『お前、何やってんだ』なんて言えますからなあ。ホッホッホ」

公演は11月1日まで東京・三軒茶屋のシアタートラム。鉾久と高桑晶子、梁鐘譽、谷口美咲子も出演。前売りはわずか、当日券あり。