「ここは軍監山縣君の命(めい)に従おう」時山の横にいた福田侠平が年長者らしい落ち着きをみせていった。
「考えてみれば、絵堂は敵の半分もない兵力でかんたんに取れた。逆に二倍、三倍の兵で囲まれ、攻めこまれたらどうなるか」とうてい絵堂では守りきれない、というのである。
全軍大田へ退く
――明朝、全軍大田へ退(ひ)け、との指令は、このあとすぐ諸隊の総督、参謀のもとへ発せられたが、時山が驚いたのは、諸隊のだれもが文句をいわず山縣の命令に従ったことだった。
山縣の手腕を認める
軍監山縣狂介の軍事における手腕と力量を、いまや諸隊の全員がみとめているのである。
大田は絵堂から南へ二里ほど行ったところにある。



