新潮社の夏のフェア「新潮文庫の100冊」が今年、50周年を迎えた。記念の今年は、新しいPRキャラクター「ヨムム」が冊子の表紙を飾る。リストの100冊は「シビレル本」「ヤバイ本」など五つの項目に分けられ、「シビレル」にはガルシア・マルケスの『百年の孤独』、「ヤバイ」には宮島未奈さんの本屋大賞受賞作『成瀬は天下を取りにいく』などが選ばれた。
50周年を記念して、伊坂幸太郎さんや江國香織さんら7人が「夏」をテーマに書き下ろした一冊『プレゼント』も刊行。2008年から続くフェア限定カバーには、今年はサリンジャーの『ナイン・ストーリーズ』などが登場する。
読書ビギナーに向けたリスト
フェアは1976年、夏休みに子どもや学生に本を読んでもらおうと始まった。若者向けに書籍を紹介する冊子は前例があったが、書店と連動して店頭に並べる試みは新しく、今では毎年100万部を超える売上冊数を記録する。
第1回のリストは、今見ると重厚な古典ぞろいだ。竹山道雄『ビルマの竪琴』など戦争が題材の作品が目立ち、フランスやロシアの文学も多い。発表間もないソルジェニーツィンの『収容所群島』もあった。
夏目漱石の『こころ』やヘミングウェーの『老人と海』のように50年選ばれ続ける名作がある一方、リストは常に変化している。近年は大人もターゲットに、人の欲望をえぐり出すナボコフの『ロリータ』などもリスト入りしたことがある。新潮社営業部の石井光一郎さん(31)は「本にあまり触れない『読書ビギナー』の定義を改めて考え直しリストを練った」と狙いを明かす。
広告の歴史も変化
フェアのPRも時代によって変遷した。パンダをモチーフにした「Yonda?」、ロボットの「キュンタ」といったキャラクターに加え、1970~90年代は芸能人を起用した。
82年の広告では、音楽家の坂本龍一さんが坂本龍馬のような扮装をしている。トレンディードラマに立て続けに出演していた陣内孝則さん(87~89年)や、10代だった宮沢りえさん(91~92年)も登場し、当時の人気ぶりをうかがわせる。
書店空間を使った新たな試み
新たなPR戦略として、今年8月からは全国各地の書店と連携したイベント「本パ」を展開する。8月8日に紀伊國屋書店新宿本店で開かれるイベントでは、作家のトークショーだけでなく、店内に芝生スペースを設置したり、DJイベントを開いたりする予定だ。書店空間を活用したユニークな催しを目指す。石井さんは「場としての書店の可能性を掘り下げていきたい」と意気込む。
各社の夏フェア
夏休みの風物詩となった文庫フェアは各社が展開。集英社の「ナツイチ2026」には、10月にアニメ映画化される本屋大賞作家、阿部暁子さんの『どこよりも遠い場所にいる君へ』など注目作がそろう。PRには乃木坂46の遠藤さくらさんと井上和さんを起用し、2人が対象作の印象的な一行を朗読するショート動画も公開されている。名作への入り口を多彩に用意した。
KADOKAWAは恒例の「夏フェア」で、知的エンタメ集団「QuizKnock」とコラボし、書店でのクイズラリーを開催。東野圭吾さんの「ラプラスの魔女」シリーズが新カバーで登場し、伊坂幸太郎さんの「殺し屋シリーズ」も期間限定カバーで販売する。ミステリーランキングを総なめにし、山本周五郎賞にも輝いた青崎有吾さんの『地雷グリコ』も選ばれている。



