坂本龍馬の功績、再評価の波
歴史上の人物の評価は、時代や研究の進展によって大きく変わる。静岡大学名誉教授・小和田哲男氏監修の『日本史 格下げ偉人と格上げ偉人』(宝島社)では、幕末の英雄・坂本龍馬の功績に新たな光が当てられている。通説では、龍馬の最大の功績として「薩長同盟の仲介」と「船中八策」が挙げられるが、当時の文書を詳細に検証すると、いずれも龍馬単独の手柄とは言い切れないという見方が有力だ。
薩長同盟、真の仲介役は中岡慎太郎
1866年に結ばれた薩摩藩と長州藩の盟約、いわゆる薩長同盟。実はこの同盟は、福岡藩士・月形洗蔵が発案し、薩摩藩主・島津久光の側近・小松帯刀と、長州藩の伊藤博文・井上馨が交渉を進めていたものだ。龍馬よりも、同じ土佐藩出身の中岡慎太郎の方が積極的に仲介役を務めていたことが分かっている。龍馬は証人として立ち会ったに過ぎないというのが、近年の研究で明らかになっている。
船中八策、オリジナル性は低い
「船中八策」は、1867年に長崎から京都へ向かう船中で、龍馬が土佐藩士・後藤象二郎に語ったとされる。内容は、朝廷への政権返上、二院制議会の設置、人材登用、対等な外交、海軍強化など。しかし、原本は現存せず、後世の創作との説もある。また、内容自体も、幕府内の開明派・大久保一翁、福井藩主・松平春嶽、儒学者・横井小楠らが既に同様の構想を唱えており、特に斬新なものではなかった。
龍馬の真の功績とは
小和田氏は、龍馬の真の功績は、彼を「幕末最大のヒーロー」に仕立て上げた元土佐藩士・坂崎紫瀾の存在にあると指摘する。坂崎は明治期に龍馬の伝記を執筆し、その功績を過大に宣伝した。龍馬は確かに幕末の動乱期に重要な役割を果たしたが、その実像は、脱藩浪人から一躍ヒーローに祭り上げられたものだというのが、現在の歴史学界の見方である。



