第61回「夏の文学教室」(日本近代文学館主催、読売新聞後援)が8月11日から16日まで、東京・有楽町のよみうりホールで開かれる。今年のテーマは「響き合うことば――近代文学と詩歌」。登壇者の一人、詩人マーサ・ナカムラさんが寄稿した。
詩への敗走と再会
高校生の頃、小さな詩集を通学鞄に忍ばせるような人間になりたいと思い、近所の書店に詩集を探しに出かけた。しかし名作詩集を一読して買うのを諦め、「詩は難しくてわからない」と敗走した。
詩を読み、書き始めたのは20歳を過ぎてから。大学で詩の実作演習を受講し、尾形亀之助(1900~42年)という詩人の作品に出会い、生まれて初めて詩を面白いと感じた。それは、鮨のコハダを食べられなかった人が美味しいコハダに出会い、食べられるようになった感覚に似ているという。
詩と親友の関係
詩人の荒川洋治さんは、この演習のゲストとして「小説や散文は百人が読んで百人がある程度同じ情景を想像できなければ失敗だが、詩は百人が読んで一人、二人でもわかる人がいたら大成功だ」と語った。詩を読んで何を言っているかわからなくても、うたわれている気持ちがわかるような気がすることがある。それは、全てを語らずとも分かり合える「親友」のようだ。好きな詩や詩人を見つけることは親友に巡り会うのと同じくらい価値があると荒川さんは学生たちに語りかけた。
詩は一方通行の言葉ではなく、読み手とともに響き合う言葉の形だ。何を言っているかわからないのに気持ちがわかるのは、その沈黙や余白に読み手が自分自身の言葉を置くからだ。解釈が人によって異なるのは、読み方を間違えているのではなく、詩が読み手と相互にただしく響き合った結果だとナカムラさんは考える。高校時代に詩が難しいと思ったのは、自分で詩を響かせる努力を知らなかったからだという。
59年ぶりの詩歌テーマ
「夏の文学教室」で詩歌がテーマに取り上げられるのは59年ぶり。ナカムラさんは「普段詩を読まない人もポップカルチャーを追うような感覚で気軽に来てほしい。親友のような詩に出会えたら嬉しい」と語る。
会場のよみうりホールはJR有楽町駅前、読売会館7階。受講料は前売り全期間券9300円(当日1万円)、前売り1日券2500円(同3000円)。チケットぴあ(Pコード:全期間996・047、各日660・624)やローソンチケット(Lコード36465)などで購入可能。問い合わせは日本近代文学館(03-3468-4181)。
マーサ・ナカムラさんは1990年埼玉県生まれ。第一詩集『狸の匣』で中原中也賞、第二詩集『雨をよぶ灯台』で萩原朔太郎賞を受賞している。



