近年、闇バイトや半グレ犯罪が社会を騒がせる中、小説家の月村奎氏が、女性を借金漬けにして風俗に沈めた大学生と半グレの実態を描いた作品『半暮刻』(双葉文庫)を刊行した。本作は、権力に刃を向けないマスメディアと、SNSの影響力を認めながらも個々の匿名発信者を蔑む登場人物のスタンスを通して、現代社会の闇に切り込む。
作品に込めた想いと作家の姿勢
月村氏は、自分の主義主張を発信するために本を書いているわけではないと語る。小説は純文学とエンターテインメントで書き方が異なり、本書はエンターテインメントとして読者を物語に引き込むための技術を多く導入しているという。その上で、物語を楽しんでもらえればいいとし、純文学でもエンターテインメントでも自ずと共通する精神性が表れると述べている。
社会的弱者への視点と社会への影響
本書には社会的弱者の声をすくい上げようとする視点が感じられるが、月村氏は「心無い仕打ちや差別を受けたこれまでの怒りや屈辱といった経験をアレンジして盛り込んだりしています」と説明。社会的弱者と呼ばれる人の気持ちを理解できると言えば傲慢だが、作品は自然に弱者に寄り添うものになっているかもしれないと語る。
作品が社会に影響を与えると思って書いていたとしたら「作家の傲慢」だと月村氏は言う。そこから何かを感じたり考えたりして、行動するかしないかを決めるのは作家ではなく読者であり、それが結果であり歴史だと述べる。本書が多くの人に読まれ好意的に受け止められたことは幸運だが、それで日本が良くなったかというと残念ながらそんなことはないと語る。
執筆の原動力
執筆の衝動の原動力は、ひとつは社会や事件への怒りや危機感、もうひとつはエンターテインメント作品の基本である「おもしろい物語になるという直感」だという。どちらが勝っても作品のバランスが崩れてしまうため、両方をうまく融合させながらモチベーションにしていくと語る。



