林真理子さん、「70代は神様からの特別な時間」新刊が15万部突破
林真理子さん、70代は特別な時間と新刊で語る

直木賞作家の林真理子さん(72)の最新刊『80代になるとたいていボケるか死ぬ。70代は神様から与えられた特別な時間』(幻冬舎新書)が15万部を超えるベストセラーとなっている。林さんは5月に日本文芸家協会理事長を三浦しをんさんに引き継ぎ、6月24日には日本大学の理事長(任期4年)を退任。現在は執筆に専念している。

「紙と心中する」 デジタルより活字

林さんは「もう私、紙と心中するから」と担当編集者に伝えたという。「AIには全く興味がないし、文字は印刷されたものしか認めない。長い間、稼がせていただいた本や活字の世界を裏切るようなことはしません」と語る。日大時代は朝9時半に迎えの車が来て、10時半から会議、夜は会食、週末も校友会回りで小説を書く余裕はなかったが、「今は朝から原稿を書き、本も好きに読める。夢のようです」と喜ぶ。

多忙な日常とルール

現在も産経新聞で小説『ファースト・ドーター、アンド…』の連載が始まり、週刊文春(ギネス記録達成)やananのエッセーも続く。お疲れさま会の誘いやサッカーワールドカップ観戦、松任谷由実さんのコンサートで感動して泣くなど、精力的に過ごしている。「70代は頭も体も大丈夫。頑張れば外見も老けない。でも、これまでと同じことをしていたらダメ」と新刊で70代のマイルールを掲げた。

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きっかけは日大での昼休み、お弁当の肉団子を落として服にシミをつけたこと。せっかちな性分を戒め「急がない、焦らない」を肝に銘じる。タクシー乗り場で行列に慌てるのもダメとし、若い人に抜かれても「しょうがない」と受け入れる。

「世間が変わったのではない。自分が老いたことを知るべし」が身にしみる。周りの人が優しいのは「おばあさんを労ってくれている」からと気づき、歯のクリーニングや咀嚼力の低下を実感。硬い煎餅は食べられるが、タコやイカは噛み切れないという。4年前の著書『成熟スイッチ』では「背伸びなくして、成長なし」と記したが、新刊では「年をとったら諦めなくてはいけないものがたくさんある。タコくらい何だろう」と変化した。

人付き合いと愚痴への考え

「年をとったら誇りを持って第一線から降りることも心がけたい」と林さん。「ねたみ、そねみの底に沈んではいけない」というルールを胸に刻み、つまらない愚痴に付き合うのは時間の無駄と語る。不遇時代に悪口を言ったこともあるが、後で自分がみじめになった経験から。日大理事長就任時のバッシングについても「争うのが嫌でみんなにいい顔したいのが欠点。やることをやっていればいつか収まると思った」と回想する。

ネット上の悪口を千以上読んだこともある。かつては知的だった論争が、SNSの短い言葉では「みんな同じに見えた」と指摘。デビュー時から叩かれ「すぐ消える」と言われたが、消えなかったという。仲のいい総務部長が「本にするんでしょう。テレビ化する時の僕の役は唐沢寿明で」と言ったことでモヤモヤが晴れ、つらさをユーモアに変える大切さを語った。

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日大での取り組みと学生への思い

理事長を引き受けた時、緑のキャンパスで学生と交流する自分を想像したが、実際は市ヶ谷の昭和の建物におじさんばかり。学生には「スマホばっかり触らないで。綺麗なもの、素晴らしいものに触れてください」と伝えた。一流のものに接する機会を作るため、サッカー日本代表の森保一監督(長崎日大高出身)を招き、講演会を開いた。林さんは面識がなく、元日本サッカー協会会長の川淵三郎キャプテンに頼んだ。森保監督は「キャプテンに頼まれたら、答えは『イエス』か『はい』です」と快諾した。ほかにも三谷幸喜さん、隈研吾さん、太田光さん、辻村深月さんらが講演した。お車代はわずかだったが、ありがたかったという。

こうした努力もあり、日大の志望者は一時7万人台から11万2000人に急増した。

エネルギー源と今後の目標

エネルギーについては「人は差し出されたら、その仕事をやりなさい」という言葉を見つけ、「私にはできる、そう思って人が言ってくれた仕事ならやらなきゃ」と語る。「書くことが私の天命。経済的に恵まれ、体力、気力、お節介な性分もある。これはいかんともしがたい」と笑う。

今後の目標は「後世に残る小説をちゃんと書きたい。作家にとって大切なのは、とんでもないことを想像し、文章にすること。年齢を重ねたなりの奇天烈なこと、変わったことをやってみたい。佐藤愛子先生みたいに、90歳でベストセラー出すのも狙っています」と意欲を示した。