フランスで最も権威ある文学賞「ゴンクール賞」の選考委員会は25日、人工知能(AI)で執筆した疑いがあるとして、ハイチ出身作家の候補作を選考から排除すると発表した。全仏でベストセラーとなっている小説で、「盗作か否か」をめぐる論議が沸騰していた。
候補作と盗作論議の経緯
排除されたのは、小説家テリソン・オレリアン氏(38)の「それか、死かの選択だった」。ハイチ人移民の主人公がさまざまな国を経てカナダに行き着く過程を描き、カナダで今春出版された。オレリアン氏自身がカナダに移民した経歴を持つことから話題を呼び、フランスで8月に出版された後、3万部以上を売り上げた。
だが、SNS上で「ほとんど全部がAIで作成されている」という告発が浮上。AI盗作検索ツールで判明したとの主張だった。仏通信社がほかの検索ツールで調べたところ、AI生成か否かは判定が分かれ、オレリアン氏は盗作を全面否定してきた。
選考委員会の声明と波紋
ゴンクール賞選考委員会は25日の声明で、「信頼に足る研究者やジャーナリストの分析を踏まえた結果」だと決定を説明。「AI生成の文章による創作作品は決して支持せず、容認しないというメッセージだ」と訴えた。
作品は今月、ゴンクール賞のほか各種文学賞の候補となり、すでに受賞が決まったものもある。盗作論議をめぐっては、オレリアン氏が黒人であることから、「反移民右派の攻撃ではないか」という批判も噴出。告発したSNSの運営者が名乗り出て、AIについて「技術が著しく進化し、作品が権威ある文学賞をもらえる水準に達している」と警鐘を鳴らす目的があったと主張するなど、波紋が広がっている。
ゴンクール賞の歴史
ゴンクール賞は100年以上の歴史を持ち、毎年11月に受賞作が決まる。過去の受賞作にはアンドレ・マルローの「人間の条件」、マルグリット・デュラスの「愛人(ラマン)」、ピエール・ルメートルの「天国でまた会おう」などがある。